【wrwrd】奇跡は使えない (ページ13)

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眠っても街は元通りに戻ったりはしない。
昨日手当した怪我人の包帯を取り替えたり、悪化していないか確認して回る。教会は粉々になってしまったから、簡易的なテントのようなものの中で、だけど。
一晩中恐怖で眠れない人の傍にいたせいか、いつのまにか朝日が昇っていて、結局一睡もすることは出来なかった。

「お姉ちゃん、私１回お家に戻ろうと思うんだけど」
「えぇ、そうね。昨夜はお疲れ様。ゆっくり休んで」
「……お姉ちゃんは？」
「……Aと交代で休むから安心して」

そう言って頭を撫でてくれる。きっとお姉ちゃんも眠いだろうに、それでも力を尽くそうとするお姉ちゃんに何も言えず、私は一度家へと戻り、ベッドに潜り込んだ。朝日が眩しいけれど、疲労しているせいか眠れそうだ。そう思って、意識を手放そうとした瞬間だった。

ドンドンドン！！と強く扉を叩かれ飛び起きる。まさかまた魔物が現れたのかと急いで扉を開ければ、そこには武装した王国兵たちが居た。
それと、鬱先生と呼ばれるメガネの男が。

「Aちゃん、教会の子だけど騎士じゃないんでしょ？なら王国軍側につかない？」
「……なぜ、そんなことを突然？」
「国民民兵の勅令だ！従わない人間は反逆罪と見なし、銃殺する！」

王国兵がそう言う。鬱先生がそれに対して何も言わないところを見るときっと本当なんだと思う。

「教会勢力は皆殺しって言う王命が出てるところを、俺がコネシマに何度もお願いして騎士じゃないAちゃんはなんとか許可してもらってんだよ？感謝してくれても良いくらいだけど」

私が死んだら、きっとお姉ちゃんは自分を責めると思う。あの時帰さなければ、って。……それは、きっとダメだ。

「分かりました。従います」

鬱先生がいやらしい笑みを浮かべ、そして私は竹槍を持たされて、大量の王国民の中の一部にされる。
鬱先生は予想とは違うみたいな顔をしていたけれど、王国兵たちの方が強かった。

「Aお姉ちゃん……」

ふと名前を呼ばれて横を見てみればそこにはまだ幼い、よく教会に遊びに来ていた子が同じように竹槍を持たされていて。

「……お姉ちゃん、助けて」

この状況を打破できるのは、きっとお姉ちゃんしかいないと。そう思わざるを得なかった。