【wrwrd】奇跡は使えない (ページ12)

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会話文多め。読み飛ばして良いです

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「うーん……、今から私はシスターらしからぬことを言います。でも、出来ればこの事は他言無用でお願いしますね」

そう言って前置きをする。ロボロさんは頷いてくれたので、私は話を続けた。

「教会では、神に見守られ、許されることが幸せだと説いています。良心に従ってお互いを助けることで、旧世界の罪は清算され、そしていずれ神の元へ戻ることができる。……でも、それだけじゃ生きていくことはできないじゃないですか」
「……というと？」
「悪い言葉を使うなら……、良心で飯が食っていけるなら苦労はしねぇ！ってところですよね。確かに巡り巡って良いことは戻ってくるかもしれないですけど、物盗りに物を持って行かれて、分け与えたと思う人はいないと思うんです。そんな人、よっぽどの聖人君子です。ということは、良心に従ってお互いを助けることは幸せだとは言いきれない。
じゃあ幸せとは。私は、その人の行動信念だと思っています」

私は周りを見渡した。談笑している人間の中の一人に、見覚えがある人を見つけて指さした。

「例えばあの人。彼は川の近くに住んでいます。度々、川で洗濯する女性を手伝うフリをして下着を盗んでいるらしいです。一月の間に二回は懺悔に来ます。神はお許しにならないでしょう。けれど、彼はなんらかの理由があって下着を盗み、そして満足しています」
「それ暴露しちゃダメなやつじゃないのかな」
「今の私はシスターではないので。……そして私ですが、私はただ、お姉ちゃんが神の福音を聞いてから神を信じ幸せになっているので神を信じています。それがまやかしだろうが、お姉ちゃんが現状幸せなら幸せなんです。それは、私の行動信念は全てお姉ちゃんに帰結するからです。教会で大人しく祈りを捧げているのは、そうすればお姉ちゃんが安心するから。お姉ちゃんが私なんて居なくなれと思ったら、私は大人しく身投げでもなんでもします。それをすることでお姉ちゃんが幸せになるなら、ですけどね」

ロボロさんは私の言葉を聞いて少し考え込んでいるようだった。私は少し冷めてしまったスープを飲み干す。まだ少し余っている炊き出しを軽くひと混ぜして、ロボロさんの器に全て注ぎ込んだ。

「えっ、ちょっと！」
「とりあえず食べてください。お腹がいっぱいになれば、人間としての幸せは満たされますよ」

そう言って笑えば、ロボロさんは流されるように食事を再開した。