【wrwrd】奇跡は使えない (ページ11)

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お姉ちゃんと枢機卿様は、王と交渉して兵糧を分けてもらったらしい。王国の非常事態なんだから仕方がないと言っていた、らしい。私はその場にいなかったからわからないけれど。

ロボロさんが兵糧を調理して炊き出しとして国民に分け与えているのを見て、私もそこへ向かった。

「あ、Aさん。炊き出し食べる？」
「いえ、お手伝いしようと思って。……と思ったけど、もう無くなりそうですね」
「うん、鬱先生が配ってない人達のところへ持っていったからね。もう俺たちの分くらいしか残ってないよ」

そう言ってロボロさんは器に二つ分盛り、片方を私に渡してくれた。

「Aさんも食べてない、よね」
「ありがとうございます。どうせなら一緒に食べませんか？お姉ちゃんは教会から配布された携帯食を持って魔物の残党が居ないか見回っているんですが、一人で食べるのは寂しくて」
「あっ、う、うん。良いよ」

私たちは近くの空き地に二人で隣同士に腰掛けて食事を始める。終始無言で、器に食器が当たる音と、王国民たちが喋っている声だけが響いていた。
私は無言に耐えきれず、なんとか言葉を紡いだ。

「……そういえば、教会無くなっちゃいましたね」
「え？あ、あぁ、そうだね」
「このままだと懺悔も出来なくなりそうなんですよね。……だから、今ここで懺悔してみません？」
「え？」
「あれ、悩みがあるんじゃなかったでしたっけ」

ロボロさんは一瞬押し黙る。もしかして面と向かっては喋れないような内容だっただろうか。懺悔室は一応匿名性がある。聞いているのは私で、声で人を判別出来るから匿名性なんてほとんど無いようなものだったけれど、顔が見えないと言うだけで安心する人はいるのだ。

「あ、もちろん無理にとは言いませんけど！その、こんな状況ですし心の負担は減らした方が良いかなと思って……」
「いや、その……自分でもよくわかっていなくて。……Aさんにとって、幸せってなんだと思う？」
「幸せ、ですか？」

哲学のような言葉に一瞬頭を悩ませる。こんな話をしてくるということは、ロボロさんはきっと今幸せについて悩んでいるんだと思う。それならば、安易なことは言えない。私は、なんとか幸せについて考えを絞り出し、そして口を開いた。