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「A、行ってくるわね」
「うん、いってらっしゃいお姉ちゃん」
王国の出口で大きく手を振れば、お姉ちゃんは今日も見回りに行った。私の自慢のお姉ちゃんは、魔物が他の村を襲っていないかを確認するために毎日毎日朝早くから近辺の村の見回りをする。
私は他の人のために頑張れるお姉ちゃんが大好きだ。毎日偉いなぁって思う。私も奇跡が使えたら、お姉ちゃんのお手伝いが出来たのになぁ。
そんなことを考えながら教会に戻る。既にそこには枢機卿が祈りをしていて、私もその隣に跪いて聖櫃にお祈りをする。
お姉ちゃんが怪我しませんように。お姉ちゃんが悲しむことが起きませんように。
お姉ちゃんが、無事に帰ってきますように。
ぎゅ、と手を握りながら、そうお祈りする。お祈りが終われば立ち上がり、掃除をしようとすると、枢機卿様から声を掛けられた。
「A」
「は、はい！」
「いつも一人で偉いですね」
そう言って枢機卿様は私の頭を撫でてくれる。手袋越しで、体温は特に感じなかったけれどその優しそうな笑みに嬉しくなった。
「…もう、枢機卿様！私は頭を撫でられて喜ぶ子どもじゃないんですよ」
「ついこの間まではオプロイテがいなければ泣いて喚いていたくらい幼かったのに……。一体いつの間に……」
「そ、そんな昔の話しないでください……」
思い出話をするようにそう言う枢機卿様に恥ずかしくなる。顔が熱い。枢機卿様は幼い頃の私を知っている。小さい頃にお姉ちゃんと一緒に教会に来たから当たり前だろうけど、それでも今もまだ幼い子を相手するような枢機卿様は意地悪だ。お姉ちゃんに対しては普通なのに。
「今日も掃除と、懺悔のお手伝い、よろしくお願いしますね」
「はい！最近は懺悔する方も少ないので、きっと皆さん幸せなんだと思います。これも聖櫃のおかげですね」
そう言えば枢機卿様は少し曖昧な顔をしながらも頷いた。
お姉ちゃんが村の外の危険を無くすことが仕事なんだとすれば、私の仕事はお掃除と懺悔のお手伝いだ。
と言っても、懺悔室にいる人の懺悔を聞いて、少しお話をするだけだけれど。最近は悩み相談みたいになっていて変な感じだ。
「それでは枢機卿猊下、お掃除してきます！」
「はい、いってらっしゃい」
枢機卿様に見送られて、私はお掃除道具を取りに行く。これからの運命も知らないまま。
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作者名：ランドルせ
| 作成日時：2021年2月4日 1時
