011:課題の謎 ページ11
包帯の巻かれた手が私の手を待っている。
あ?乗せるわけねえだろ。
と、いつも強気な私なら、そう言っていたはずだ。
こんな変な空間に、閉じ込められていない私なら。
「嫌なら殴るでも好きにしてくれたまえ」
他に成す術もなく恐る恐る乗せた手。
そんな私を下から見つめるのは、優しく落ち着いた鷲色の双眼。
まるで羽を撫でるように私の手を握ってから、目を潜めた私を宥めるように視線を送っている。
これは冗談なしの太宰だと、すぐに分かった。
「君は目を瞑ってていいよ」そう言われているみたいに。
「A」
目元に力が入る。
名前を呼ばれて目を瞑った時、微かな感触が手の甲に伝った。気づいた時には手が離れて、太宰さんは立ち上がってる。
「さて」
何を思ってしまったのか。
ふっと頭に乗る包帯に酷く安心感を覚えて、どこか、対峙した2人から守られている気がした。
扉はまだあかない。
けれど、その扉にはられた紙は───
「確かにAが鍵みたいだけれど
Aが全員に、それもやる側、だとは決まっていないみたいだ」
全員が黙って目を向けた先。
紙に浮かんだ課題が、じんわりと滲んでから、するすると変わっていく。
「どうやらそうみたいですね」
得意気ににっこりと笑う太宰さんの前には、まるで感情などないような冷たい表情で賛同するドストエフスキー。
肯定的な意見の割に、2人の間は
何故か冷戦を繰り広げているような空気が漂っている気がした。
私が関係していて、けれどその条件はその時によるということ。首謀者は一体何がしたいのだろう。
無理難題を押し付けて───私の異能力を使った、彼らの殺し合いとか。
「太宰さん」
「なんだい?」
そうだとしたら
「私に隠してること事、他にないですよね?」
だとしたら
隣で笑う男しかいなくなる。
私が真剣な瞳を向けたら、太宰さんは数秒キョトンとした後に、ふっと顔の力を抜いた。それから微笑んでいて
「Aこそ、本当は怖いです、助けてください太宰さんって甘えてくれていいのだよ?」
「私が息の根を止めてやろうか???」
誰の真似だそれくそむかつく。
変な猫撫で声で上目遣いをするものだから距離を取って、思わずも鳥肌になったじゃないか。
やっぱり太宰さんは無理。
そう、やはり私たちはこの課題をクリアして行かなければならないのか
見上げた紙の文字には“抱っこする”
なんて、まるでかの有名な王様ゲームみたいな
彼は、笑っていた。
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三斗(トリップ願望者) - 更新をお願い致します!(土下座)楽しみにしてます! (2022年6月23日 0時) (レス) @page11 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
太宰治 - この作品大好きです!お忙しいかもしれませんが、是非続きが読みたいです! (2021年3月26日 10時) (レス) id: 09b07293c3 (このIDを非表示/違反報告)
白壇 - 言葉選びも展開も面白いです!好きです!!抱いて((天才ですか!?お忙しいのだと思いますが、是非続きが読みたいです…! (2019年11月27日 1時) (レス) id: 42869b6ef5 (このIDを非表示/違反報告)
宰原叶(プロフ) - 専門学生はつらいよさん» いえいえ!頑張ってください!! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a120f73047 (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - いえいえ(* ´ ▽ ` *)これからも更新楽しみにしてますね!無理しない程度に頑張ってください(*≧∀≦*) (2019年8月17日 20時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社畜 | 作成日時:2019年8月7日 10時