第八幕 ページ11
「ど、どういうことや…」
「ん?ああ、俺はアレのもう1人の人格、あいつはいつも歌しか歌ってねぇから暇で暇で」
はぁ、とため息をつく彼女は先ほどまでやめてと懇願したか弱き盲目の歌姫なのか。
いや、これはもう別の者と捉えても良いのかもしれない。
明らかな戦闘態勢でこちらを眺めるのは標的ではない、ただの敵だ。
「オスマン、トントン、構えろ」
「っでもグルッペン!」
「こいつを捕獲対象から迎撃対象へと変更する。異論は認めない」
2人は苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、いつもの態勢へと移った。
それを見た彼女はまた嬉しそうに笑った。
「そうそう、そう来なくちゃ!俺を楽しませてよ!
その力で!あのジジイが言った忌々しい力で!」
すっと彼女は息を吸い込み、大きな声を放つ。
それは先ほどの清らかな声ではなく、まるで地響きに近かった。
「っ…!耳痛すぎめう〜!」
「あの子あんな力も持ってたんか!」
「…」
地響きのような声が止むと、彼女は地を蹴りまるで瞬間移動したかのようにオスマンの目の前に立つと拳を大きく振り下ろす。オスマンの顔をスレスレで拳は空を切るとAは小さく舌打ちをする。オスマンは後ろに数歩下がるとその前にはトントンが援護に入る。
「トントン!」
「分かっとりますよ!」
トントンはふっ!と右手をかざすとあの男を潰した時と同じようにその場はボコリと大きく凹んだ。Aはぅあ"っ?!と声を上げ潰れないように必死に耐えている。
「っ!?俺のに逆らえるんか!」
あんたやばいわ!!と前線で戦うトントンに重力の解除されたAは襲い掛かる。
『はっ!あんた強いな、さすがの俺もやられると思った!』
この体は軟弱だからな!という彼女?は大きく息を吸い、声を放つ。
鼓膜を破りに来るその爆音はさっきのものよりも強力なもので痛みに膝をついた。
「『止まれ』!」
『!な、んだ?』
オスマンに襲い掛かろうとしたAは、オスマンの発した"言葉"により動きが留まる。
オスマンのいつもの余裕の表情も今はなくなっている。
「トントン、今ならいけるめう!」
『っ、な』
手に持っている粛清剣を振りかぶる。
ざしゅっ
彼女の細い腕から出る血がトントンの顔にかかる。
傷は浅かったようだが、常人であるなら、もう一人の彼女なら、
これだけの出血量で済むわけがない。
『ぐっ、ぅう、』
腕を抑るAにトントンはゆっくり近寄る。
「イキってたくせに案外あっけないですねぇ」
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蜘蛛 - 素晴らしい作品をありがとうございます! 更新、無理しない程度で頑張ってください! (2018年9月17日 20時) (レス) id: 0208853f54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てい | 作成日時:2017年1月25日 3時