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その日は案外早く訪れて、恭弥と一緒に霧の道を歩く。結局こうなるって分かってたけど、なんだかなぁと腑に落ちない。
群れたら蕁麻疹出るって言ってたのに、大丈夫なのかな。嫌な視線に晒されたりしないかなとか。そういうことを考えちゃう。僕は人よりも多くの年数を生きるし、僕たちの関係を知る者だってそのうち死ぬから、そんなものは気にしないけど、恭弥は違う。
生きてる間ずっと付き纏うその視線を苦に思わないのかな。負担になるくらいなら、別に公にしなくてもいいと思うんだ。隣にいてくれるならいいと思うし、多くのものは望まない。
そっと隣を窺えば、少しばかり憂鬱そうに見えて。足を止めた僕を恭弥は振り返った。
「どうしたの」
「……その、行きたくないから行かなければいいのにって思って、」
「確かにパーティーなんて面倒なもの、普段なら行かないけど」
恭弥がくいっと手を引くから、釣られて前に進む。
「Aを僕のだって示せるのなら、さほど苦ではないよ」
「え……目的、そっちだったの？」
「むしろそれ以外に何があるの」
くつくつと喉で笑う音が聞こえて、そっか〜と肩の力が抜ける。憂いはなくなるばかりか、むしろ嬉しくなってしまう。
だから、ぎゅうっと手に力を込めて恭弥に笑いかけた。
「じゃあ、堂々としないとだね」
「いつも通りでいいよ。他が君の魅力に気付いたら困る」
「えー？僕は恭弥の方が心配。かっこいいから」
ニコニコ笑いながら歩いていると、ようやく前が白んでくる。僕の言葉を反芻した恭弥が首を傾げた。その様子を横目で見ながら声を上げて笑ってしまう。
恭弥ってば、自分がかっこいいの知らないのかな。自身に興味がないのは知っているけど、そこまでとは知らなかったなぁ。
「ほら、もうすぐ着くよ」
あとでたくさん言おうと決めて、恭弥を引っ張る。急激に明るくなった周囲に目を瞬かせて、出迎えの黒服が僕たちに招待状を出すように言った。恭弥が招待状を差し出して、それを確認した黒服が僕を見る。すると、恭弥が僕の腰に手を回して、黒服を睨みつけた。
「僕のなんだけど」
「……ああ、フィロウ様ですね。大変失礼いたしました。どうぞこちらへ」
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
