＊＊＊ ページ23
腑に落ちないというような表情をする沢田綱吉を横目に伸びをする。本気を出そうとしないからつまらなかったけど、良い動きをするようになってきたよね。
「そういえば、Aさんって進路どうする、んですか？」
「なに、急に」
「いや、オレとは違って頭もいいと思うし、どうするのかなって」
地面にへたり込んだまま、沢田綱吉は僕を見上げる。しばらく目を合わせていたけど、首を下に向けているのがめんどくさくなって目を逸らした。
「何にも考えてないよ」
「えっ！？」
「……あ、そういえば、就職先はあるね」
ふと思い出したのはヴァリアーのこと。迷ったら来いって言ってたし、暗殺部隊に身を置くのも良いかも。
あー、でも、国外に拠点を置くことになるし、外国語は一通り話せるようにならないといけないね。
「就職先って……？」
「ヴァリアー」
「暗殺部隊！？」
ひいいと情けない悲鳴が聞こえる。
そんなに怖がることはないでしょ。沢田綱吉は一度彼らを退けているんだから。そう言おうと思って沢田綱吉に目をやると、その視線は僕の後ろに向いていた。
その視線を辿るように後ろを振り向くと、むっすりと不機嫌そうな恭弥が僕を見ている。不思議に思いつつもそばに寄ったら、手を繋がれてそのまま歩き出した。
まだまだ遊び足りなくて後ろ髪を引かれるような思いで、恭弥のあとをついていく。行き先は応接室だったから、何かあったっけって考えたけど、なにも思い当たらない。
書類は片付けているし、僕がやることはもうないはず。
応接室に着いた途端ソファーに押し倒された。ぎっとソファーが軋んで、恭弥が馬乗りになる。なんだか雲行きが怪しくなってきて冷や汗が流れた。
「きょ、恭弥？どうしたの？」
「就職先はヴァリアーだなんて言っておいて、愚問だね」
「えっ！？待って恭弥、違う、それ違くて！」
「おまけに進路希望の調査票は置きっぱなし。これなら僕が何を書いても文句は言えないだろ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
