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「それで、どうするの？」
「え、あ……でも、迷惑じゃない？」
「いずれそうなるんだから、遅いか早いかの違いだけだよ」
いずれそうなる……？そうなの？ぽやぽやして回らない頭で首を傾げると、惚けている僕に気付いたのか、恭弥が小さく笑った。徐々に回り始めた思考で言葉の意味を考える。
いずれそうなる……って結婚するから？気付いた途端、きゅうんって胸が締め付けられて、恭弥の肩に額を押し付けた。
「それともここを引き払って僕と暮らす？」
「そ、れは……まだ、」
「そう」
後頭部を優しく撫でられて、ふわふわする。脳みそが溶けたかのように何も考えられない。それさえも見透かされているようで、恭弥は小さく笑っていた。
「きょーや、あんまり甘やかさないで」
「なんで？」
「だって、僕がダメになるじゃん」
「なればいい」
そう簡単にさぁ……。困るから言ってるのに、もう。ぐりぐりと頭を押し付けて、どうしたものかなと悩む。
依存しちゃうじゃん、こんなの。甘やかされるの慣れてないんだから、もうちょっと優しくしてくれたって良いと思うんだけど。
「A、顔をあげて」
「なに、んっ」
押し付けられる唇を受け入れて、思考はまた止まる。口をくっつけてるだけなのに、なんでこんなに満たされるのかな。……もうちょっとだけ、このまま。
静かな部屋にリップ音と荒い吐息が響く。視線を絡めて、手を繋いで。色素の薄い瞳が混じり気のない好意を伝えてくるから、全部全部明け渡したくなる。
「いいね、その顔」
「っ、ふ……きょうや、もっと」
「うん。こっち」
膝に座らされて、お互いの鼓動が伝わるくらいに距離が縮まる。耳の輪郭をなぞられながら小さく何度もキスされた。胸の中にふわふわと降り積もる温かいもの。
それが心臓の鼓動を早くさせて、心地いいのに落ち着かない。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
