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それから黙々と食べて、すぐになくなってしまったアップルパイを見下ろす。一切れだけじゃちょっと物足りない。甘いものってなんでこんなに欲しくなっちゃうんだろうね。
恭弥も食べ終わったらしく、ちょうど良かったから、お皿を片付ける。そのまま洗い物をしていると、恭弥からじっと視線を感じた。顔を上げて首を傾げると、機嫌良さそうに笑っている。
「なぁに？どうしたの？」
「新婚みたいだね」
「っ！？」
手が滑ってお皿を落としそうになった。慌ててお皿を置いて恭弥を睨む。くつくつと笑って恭弥は僕が読んでいた本を手に取った。もう、と呟いてお皿洗いを済ませる。
手を拭いてソファーに座ると、本を読んでいる恭弥がもたれかかってきた。それ、僕が読んでたのに。
「君、こういう本が好きなの？」
「特には？あったから読んでるだけだよ」
「ふうん」
恭弥は読まないジャンルかもねぇ。それ、恋愛小説だもん。
この部屋にある本棚には毎月2冊ほど新しい本が追加される。エンティティさまが暇潰しとして追加してくれているようで、僕の楽しみになっているんだ。
今月も追加されたから読んでいるんだけど、恋愛小説なんて初めて追加されたから、びっくりしちゃった。
「飽きた」
「じゃあ、返して？僕は読むから」
不満そうな顔をしながら恭弥は僕に本を渡す。
「他の本は本棚にあるよ？」
「そういうことじゃない」
「え〜？」
本を開きながら考える。だけど、本を読み始めると思考がそっちにいっちゃうからおざなりになってしまって、生返事をした。それが気に入らないのか、恭弥は僕の頬を引っ張る。
ごめんって、と言いながら恭弥を見ると、やっぱり不機嫌そう。本を閉じて恭弥の頭に頬を擦り寄せた。手に持っていた本は抜き取られて、かわりに恭弥に手を握られる。
「ゆっくりする？」
「うん」
目を合わせると、ゆっくり顔が近付いてくる。優しく何度もキスされて、いつの間にかソファーに倒れ込んでいた。手を繋いだまま覆い被さられて、鼻先や頬にもキスが降ってくる。
数秒目を合わせてから、恭弥が僕の首元に顔を埋めた。くすぐったいよ、と笑い声を上げたとき、恭弥が小さくリップ音を立てる。びっくりして恭弥を呼ぶと、熱い軟体が首筋を這った。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
