ある穏やかな日 ページ1
ガチャリと扉が開いた。リビングでコーヒーを飲みながら本を読んでいた僕は、パタパタとスリッパを鳴らしてリビングのドアを開ける。そこから顔を覗かせると、恭弥が靴を脱いでいた。
パッと顔を明るくさせて、それから少し迷ってからおかえりと言ってみる。一緒に暮らしているわけじゃないけど、なんとなく言ってみたくて。結構恥ずかしいかも。
ゆるりと目を細めて、恭弥はただいまと言った。
「んふ、なんかくすぐったいね」
リビングに入ってきた恭弥を迎え入れながら何を飲むか聞いてみると、コーヒーと簡潔に返ってくる。恭弥は持っていた箱をテーブルに置いて、鼻歌を歌っている僕に近付いた。
「フォークと皿、用意するよ」
「うん、ありがとう。今日は何のケーキ？」
「アップルパイとモンブランがあるけど」
「ん〜、迷う……アップルパイ食べていい？」
クスッと笑って恭弥が頷いた。僕は恭弥のコーヒーを持って、恭弥はお皿とフォークを持って、リビングに戻る。早くケーキを食べようと恭弥に言って、本を片付けた。
箱を開けると、ツヤツヤのアップルパイとマロンクリームたっぷりのモンブラン。わ〜と声を上げると、恭弥は優しい眼差しで僕を見ている。恥ずかしいから、少し目を逸らしてケーキをお皿に取る。
恭弥の分もお皿に取って渡すと、お礼と一緒に頬にキスされた。じわっと頬が熱くなる。
誤魔化すようにコーヒーを飲んで、アップルパイを頬張った。サクサクのパイ生地。甘いリンゴ。美味しいと声を跳ねさせると、恭弥がモンブランを食べている。
モンブランも美味しそう……。
「恭弥、一口ちょうだい？」
「いいよ」
「ありがとう！」
あーっと口を開けると、仕方ないなって顔をして恭弥がモンブランをくれた。モンブランも美味しい！
お返しにアップルパイを切り分けて、恭弥に差し出す。パクリと一口で食べられて、美味しいでしょと笑いかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
