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耳鳴りがする。頭が揺れて、呼吸がままならなかった。虚ろなまま、口を開く。
「……罪だよ。これは罪だ。だけど、罰じゃない。罰にはなり得ない」
「そうか。難儀じゃのう」
オブセッションマークの熱が次第に引いていく。今度は間違えなかったのだ。ああ、と安堵の息が漏れる。
むしゃくしゃして手当たり次第殺してしまいたい。誰でも良いから、溢れる血を浴びたい。もう何も考えたくない。
俯いたままタルボさんが沢田綱吉に問いかけるのを聞いていた。リングのバージョンアップがタルボさんに依頼される。気を使うように、心配するように、僕に視線が向けられているのが分かった。
視界の端に瓶が映る。顔を上げると、タルボさんが僕を見ていた。
「泣いてくれるか？」
「…………1人にしてくれるのなら、」
差し出された瓶をのろのろと手を伸ばして受け取る。あの人を想って泣いたのは、この世界に来たばかりのとき以来だ。それ以降は泣かなかった。
泣きたくなかったから。思い出したくなかったから。だから、前を向いて歩いてきていたというのに、またあの苦しさを思い出すハメになるとは思わなかった。
「9代目よ。地下の部屋を貸してくれんか。彼奴にも部屋を」
「わかりました、タルボじじ様」
おいで、と優しい声に頷く。泣けるだろうか。僕は泣くのだろうか。頭がごちゃごちゃして、まとまらない。
あのターコイズブルーを、色の違う双眸を思い出す。脳裏で笑っている先輩は、こちらに来る前に見た冷たい表情で塗り変えられた。
9代目とタルボさんのあとを静かについていく。地下へ続く階段を降りて、タルボさんとは違う部屋に通された。ソファーと机だけがある小さな部屋。ソファーに座って天井を見上げる。
すぐに歪んだ視界に、なんだと声がこぼれた。
「……僕、まだ泣けるじゃん」
瓶の蓋を開けて頰に添える。一粒が何度も瓶へ流れていった。流れたときは透明でただの液体だった涙が、瓶に落ちた途端黒くどろどろと粘性を増す。未練たらしい僕の想いがそのまま液体になったみたいだ。
3分の2くらいまで溜まったところで瓶の蓋を閉める。止まらない涙はそのままにタルボさんへ渡しにいくと、僕を出迎えたタルボさんは申し訳なさそうにした。
「その顔、嫌い」
「すまんのう」
「嫌いだって言ってるじゃん」
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作者名：怜
| 作成日時：2023年2月20日 23時
