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目を伏せたヒバリはそっと息をついた。今まで生きてきた中でAがいない時間を過ごした方が長いというのに、今では想像もできないことが可笑しく感じる。
しかし、ヒバリを可笑しくさせたのはAだ。ならば、彼が責任を取るのが当たり前だろうと責任転嫁をし、ヒバリは決して腕を離さないよう手の力をさらに込める。
Aはその腕を一瞬だけ見ると、ヒバリにだけ聞こえるように口を開いた。
「過去に戻ったら話があります」
「……嫌だ」
「意地でも聞いてもらいますよ」
腕を握っているヒバリの手にAは手を重ねる。
「だから、それまでは逃げません」
「その後は僕から離れるんだろ」
「……はい。そうしなきゃいけない理由ができましたから」
Aが唇を震わせてか細く息を吐いた。その様子から迷いを見つけて、ヒバリは怒鳴りたくなるような激情を必死に堪える。Aが誰かに支配されていようとどうでも良かった。彼が敬愛してやまないという神の存在だって苛立ったことはあるが、煩わしく思ったことなど一度もなかった。
それも含めてAという存在だったからだ。しかし、その彼が迷うようであれば、話は別だ。自身の意思を曲げてまで首を垂れるというのなら、そんな枷は壊れてしまえと、いっそのこと壊してやろうと思うのだ。
一度首を振ったヒバリは努めて冷静に話す。
「そんな様子の君の話は聞けないな。その覚悟ができていないなら、なおさら」
「覚悟、ですか……」
願わくばその覚悟が一生できないでいてほしいが、それは難しいのだろうとヒバリは知っている。それこそ彼が心酔している神が一言発するだけでできてしまうものなのだ。
なんとも脆く危うい関係性だと自嘲したくなるのを抑えて、ヒバリはAを眺めていた。
それからしばらくして、リボーンが表情を明るくさせる。雰囲気が軽くなったことに気付いたのか、Aは顔を上げて目を瞬かせた。
「たった今、ジャンニーニからイタリアの主力線の情報が入ったぞ。XANXUSが敵の大将を倒したらしい」
喜びの声に不思議そうな表情をするA。入江が待ったをかけたが、敵が撤退し始めているという言葉を聞いて、同様に喜んでいた。そんなお祝いムードの中、水を刺した声がある。
『いいや、ただの小休止だよ。イタリアの主力戦も日本のメローネ基地も、すんごい楽しかった』
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月24日 23時