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「決着つかないんですね、10年後だと」
「今度は僕が勝つけどね」
「え〜、僕は負けないですよ」
武器を収めた2人が楽しそうに話し合う様子は先までの戦闘を微塵も感じさせない。Aに近寄ったヒバリが頰についている血を落とすように頬を撫でる。
傷ついているのはヒバリの方だというのに、自分の怪我には全く頓着がないようだった。
「それにしても、君の悪癖には困ったものだね」
「悪癖……？なにがですか？」
「自分の体を消耗品のように扱うところだよ」
微かに瞠目したAはバツが悪そうに視線を彷徨わせて困っているかのように笑う。まだ新鮮な傷から滴り落ちる血はヒバリの腕を伝って床に溜まった。
話を変えようとAはそれを指し示すも、ヒバリは一瞥しただけでまたAに目を向ける。
「君は生に対する執着が欠落しているんだ。どうせ治るからと自分を大切にしない」
「うっ……で、でもっ、」
もごもごと言い訳を探すAの顔を両手で包み、ヒバリは額を合わせる。
「僕を見て、A」
「あ、」
「君は人形じゃない。人間だ」
Aの表情が歪んでいく。今にも泣き出しそうな、迷いを含んだ色だった。ヒバリの言葉は何よりも真っ直ぐだからこそ、Aに容赦なく突き刺さる。
「怪我はすぐに治ったとしても痛みはある。炎が灯せなくても、君の意志がそこにある限り、君は人間なんだよ」
どろりと黒い涙が溢れ出る。毒素と捉えられるような粘性を伴う涙だった。とめどなく溢れる液体はAの頬を汚していく。
違うと繰り返し譫言のように呟いていたAはショートしたかのように倒れ込んだ。そんなAを容易く受け止めたヒバリはどこか満足そうで、表情を和らげている。
そこに水を差したのは今まで静かに見守っていたリボーンだった。
「Aに何したんだ？」
「マインドコントロールを解いたのさ」
なんてことないように言い放つヒバリに、リボーンは眉を顰める。Aにかけていた言葉、それとマインドコントロールを解くという発言。
それらを組み合わせて出来上がった結論は、Aが自身を人形だと思っていたということ。
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作者名：怜
| 作成日時：2022年10月24日 23時
