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B棟がぐしゃぐしゃだ。いつの間にあんな工事をしてたんだろ。本当に直るの?チェルベッロが言ってたこともなんだか信用できなくなってくるよ。
「A様」
「こんなとこまで何の用?」
「先にお伝えすべきことが。明晩の戦いは“使徒の戦い”となりました。どうぞお忘れなく」
チェルベッロが貯水庫の下から跪いて僕を見上げる。伝えられた言葉に口角が釣り上がって笑い声が漏れた。
ようやくか。ようやくだ。ようやく偽者を殺せる。エンティティさまが整えてくださった舞台で。ああ、どうやって殺してやろう?絶望させたいな。虚言を謳い、妄想を撒き散らした愚者を。
この世に生を受けたことを後悔するくらい、辛酸を嘗めさせてやりたい。
「我々はエンティティのことを何も知りません。その上で一つ教えてください。エンティティとは何者ですか?」
「知らなかったの?……それは悪いことをしたね」
掴みかかったことを詫びて、少し考える。うん、誠意を表すためにも教えてあげようか。
「エンティティさまは神様だよ。正真正銘の神様。僕らが敬愛してやまない、偉大なお方だ」
「……ありがとうございます」
「ううん。君たちも頑張ってね」
薄く笑みを浮かべて屋上から出ていったチェルベッロを見送る。ヒバリさんから視線を感じて目を向けた。聞いてないよと言わんばかりの表情に少し吹き出す。
ケラケラと笑っていると、ヒバリさんは不機嫌を隠さず、どういうことだと僕に聞いた。
「ふふ、僕大好きな神様がいるんです。幸運にも目をかけてもらっていて、信者だと名乗ることを聴されています。その神様から少し前に命令が下されまして」
「それが“使徒の戦い”?」
「正確にはその舞台で偽者を殺せという命令です」
茶目っ気たっぷりに笑ってみせると、ヒバリさんはそうと呟く。あからさまに興味を失ったと伝わってきて、少しばかり頬を膨らませた。
まあ、別にいいか。ヒバリさんが僕の邪魔をしないということが分かっただけでも僥倖だ。さすがに恩を感じている人をこの手で殺すのは忍びないからね。
さて、雨戦はどうだろう。そういえば、もう後がないんだっけ?
──僕はまだ、君について知らないことが多すぎる。誰よりも近くにいるはずなのに。
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怜(プロフ) - リィさん» ありがとうございます!!面白いと言っていただけるとやる気が出ます!まだストックは尽きていないので、今後も早めに更新できると思います。お楽しみに〜! (2022年10月7日 0時) (レス) id: 37b3e8feed (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - あ"ぁ"っ…!楽しみすぎてつらい…!!なんでこんな面白い話を作れるのか疑問です…更新頑張ってください!! (2022年10月5日 13時) (レス) @page32 id: 1730b53d16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月1日 3時