後日談来る！ ページ33
あれから1ヶ月経って、日常が返ってきた。ヒバリさんが入院している間の書類は僕でもできるのは済ませていたから、お礼にってナミモリーヌのケーキ買ってきてくれたっけ。美味しかったなぁ。
それはともかく、今日は野球部の秋の大会があるんだ。暇だからそれを見にいこうとすれば、バーズの鳥が僕の周りをうろちょろとする。僕の名前を繰り返し呼んで、頭に乗ってはドアの方に飛ぶを何度も何度もするから、渋々腰を上げた。
先導するように飛ぶバーズの鳥に導かれながら歩いていけば、なんとなく察しがつく。屋上に続く階段だからね。大方ヒバリさんだろうけど。電話で呼び出せば早いのに。
開いていない扉の前で旋回する鳥にドアを開けてやって、僕も屋上へ出る。寝転がっているヒバリさんの隣に降りると、鳥はまた僕の名前を呼んだ。
「ヒバリさーん、何か用事ですか？」
「いや。この子の訓練だよ」
「僕じゃなくても……」
ため息をついてヒバリさんの隣に腰を下ろす。Aと繰り返す鳥に指を差し出してやると、そこに止まって落ち着く場所を探すように動いた。まん丸としたシルエットを撫でてやれば、なんだか気持ちよさそうな顔をするから、可愛くて少し笑う。
そんな戯れの中、草壁さんが屋上に来た。
「委員長！！本日は野球部秋の大会です！！」
興味なさそうに欠伸をするヒバリさん。お疲れ様です、と声をかけて鳥に目を落とした。この子名前あるのかな。
「ヒバリさん、この子の名前は？」
「ないよ」
「そうなんですか。てっきりヒバリさんが飼ってるのかと思いました」
ねえと鳥に同意を求めると、ヒバリさんの名前を呼ぶ。ほら、とヒバリさんを見れば、胡乱げな表情をした。
「ついてくるだけ」
「懐かれてるんじゃないですか」
「許した覚えはないよ」
「そんな冷たいこと言わずに。この子もヒバリさんがいいって言ってますよ」
「ヒバリ！A？」
パタパタと羽ばたいて僕の指から肩に移動すると、頬に擦り寄ってくる。くすぐったいって、もう。
くすくすと笑っていれば、ヒバリさんは上体を起こして鳥を掬った。あっと名残惜しい気持ちで鳥を目で追えば、ヒバリさんはむすっとしている。
「この子は僕が飼うから」
「あ、そうですか。分かりました」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2022年9月25日 23時
