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「僕は痛みを感じませんからね」
「な……!何言ってんの!!?仲間の体なんだろ!!?」
「違いますよ。憑依したら僕の体です。壊れようが、息絶えようが、僕の勝手だ」
「……な……そんなの……おかしいよ」
おかしい。そうか、おかしいのか。じゃあ、僕もおかしい?否、おかしくない。
だって、僕はエンティティさまに従うためにこの体を与えられた。だから、エンティティさまのために死ぬのが当たり前だ。与えられたぶん、返していくのが当たり前だ。
たぶん、柿本千種も城島犬もそうなんだろう。六道骸に与えられたぶん、それを返すために。なんだ、見方が違うだけだ。見える景色が異なっているだけだ。
「たのむ!!やめてくれ!!このままじゃ死んじゃうよ!!」
「クフフフ。思い出しましたよ。君はバーズとの戦いでガールフレンドのために自分にナイフを突き立てようとしたんでしたね。──……それでいきましょう。君はその甘さゆえ、僕に乗っ取られる」
「え……」
「いいですか?君の仲間をこれ以上傷つけられたくなければ、逃げずにおとなしく契約してください」
なるほど。それは沢田綱吉に効果的だ。だって、彼は仲間を見捨てられない。こんなときにまでその覚悟ができない。なんて可哀想なんだろう。
そうして少し羨ましく思う。どこまでも真っ直ぐだから。痛いほどに妬ましく思ってしまう。僕とは違う、純粋さにむしろ敬意すら覚えてしまう。
リボーンに助けを乞うその姿すら、僕にはないものだ。そうやって頼れる人がいることを、その重要さを君はまだ知らない。
「情けねぇ声出すな」
「だ……って……オレ……どうしたら……」
「いいかツナ。おまえは誰よりもボンゴレ10代目なんだ。おまえが気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ」
「オ……オレの……きもち……?」
しばらくの沈黙。それから沢田綱吉はぽつりと呟いた。
「骸に……勝ちたい──……」
「ほう、これは意外ですね。だが続きは乗っ取った後にゆっくり聞きましょう。君の手で仲間を葬った後にね」
「……こんなひどい奴に……負けたくない……こいつにだけは勝ちたいんだ!!!」
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作者名:怜 | 作成日時:2022年9月25日 23時