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その後はアズールに構いっぱなしで、あっという間に時間は過ぎた。アナウンスからテストが終了したって聞こえてきて、各自自室に戻るよう促される。
「明日朝8時には、学園へ向けて出発する予定なんで……。それまで大人しくしといて」
「……あ、そうだ。ヴィル氏。ちょっと話があるから残ってくれる?」
「アタシにだけ?かまわないけど……」
じゃあ、戻ろうかってアズールの手を引いた。どうせ個室に入る前で別れるけど、途中までは一緒だし。
「そうでした。イデアさん、僕とAは同じ部屋を使っても?」
「え、な、なんで?」
「番のそばにいるのに理由が必要ですか?」
至極当然と言わんばかりにアズールが言う。しばらく考え込んでいたイデアさんは問題なしと判断したのか、頷いて俺の部屋のほうが広いからそっちを使うようにって。
俺の部屋って広かったんだ?知らなかったな。
「行きましょうか、A」
腰に手を当てられて歩くように促される。
すごく長い時間をここで過ごしているように感じてるけど、実際そんなに経ってないんだよな。明日の朝には帰れるんだから、それまでの辛抱だ。
帰ったら真っ先にフロイドとジェイドを抱きしめよう。寂しがりで心配性の2人だから、しばらく離してくれないだろうけど、それも仕方ないよな。
「僕に構うのも忘れないでくださいね」
「忘れないって。でも、フロイドとジェイドを落ち着かせてからね」
「今回のような状況は初めてなので、暴れていないと良いんですが」
確かに。ちゃんと大人しく待ってくれてるといいけど、難しいような気がするな。だって、アズールと一緒に誘拐されたとはいえ、その相手は正体不明の『S.T.Y.X.』だ。ストレスが溜まるのは分かりきってるし。八つ当たりで寮生全員倒れてても不思議じゃないと思うけど。
「宥めるの、手伝ってくれる?」
「仕方ありませんね。Aからのキスで手を打ちましょう」
「本当、ちゃっかりしてるよな」
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作者名:怜 | 作成日時:2022年1月31日 0時