魔力よりタバコをくれ十六本目【ツイステ】 (ページ2)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:40,526 hit

＊＊＊ページ2

口元を押さえながら、またひたすら歩かされる。大きな会議室のような部屋に入らされて、その中でイデアさんが寛いでいたら、他の奴らが声を荒げるのも仕方ないと思うんだ。

「イデアさんのこと誤解してたみたいだ」

「エッ」

「100歩譲ったとしてもあんな荒々しいのは嫌いだな」

腕を組んで非難の眼差しを向ける。いじけたようにそっぽを向いたイデアさん。それから思い出したようにシガレットケースを取り出すと、俺に渡す。
驚いてイデアさんに目を向ければ、タバコを取り出して吸うような真似をした。いいってことか？

それなら、と遠慮なくシガレットケースからタバコを一本取る。

「チッ……なにより、腹が立つのはこの首輪だ」

「このチョーカー……ボクのユニーク魔法、『首をはねろ(オフ・ウィズ・ユアヘッド)』と同じ効果があるようだね」

ああ、そういうこと。魔法の使用制限がかかってるから、吸っても大丈夫って。まあ、吸えるんだったら何でもいいけど。
レオナ・キングスカラーが眉を顰めて俺を見る。それを無視して煙を肺に溜め込んだ。というか、館内は禁煙だって言われると思ってたんだけど。

「A氏のタバコ、ちょっと分析させてもらったんだけど、普通のタバコに含まれるニコチンやらタールやらは検出されなかったんですわ。んで、害がないならいっかってことに」

「へえ。それは初めて知ったな」

「で、それ以外はなぁ〜んにも検知できなかったんだけど、A氏何か知らない？」

「というと？」

「害がないってことしか分かんなかった。魔力補充するための道具なんだから、別の何かが出てもおかしくないはずなんすわ」

そう言われたってな。俺はこれが魔力を補充できるタバコってことしか知らない。渡されたものでしかない。

言い淀む俺に寄り添うようにアズールが近寄る。うなじに触れた手が後頭部を優しく梳くように撫でた。ああ、そうだな。いつかは向かい合わなきゃいけない。いつかは話さなきゃいけない。
俺が異世界人であることを。