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90-7 ページ24

ご飯を食べて僕を教室まで送ってくれたフロイド先輩は思い出したように立ち止まる。不思議に思って見上げると、フロイド先輩は僕の片手を掬い上げて手の甲に口付けた。みるみるうちに赤くなる頬。僕を上目遣いで見た先輩はにまぁと口角を上げた。


「トビウオちゃん」

「っはい!」


ひっくり返った声が恥ずかしくて目を逸らす。手の甲に唇を何度も押し当てて、フロイド先輩は満足そうに僕の手を離した。


「放課後迎えに行くから待ってて」

「え、あの、」

「オレとデートしよ?」


お願いをするときだけ、フロイド先輩は甘えるような声を出す。僕がそれに弱いってことを知ってるからだ。
催眠をかけられたみたいに素直に頷いてしまう僕を、フロイド先輩は嬉しそうに抱き上げた。足が地につかなくなって思わずフロイド先輩の頭を抱きしめると、ケラケラと笑い声がする。


「お、おろしてください……」

「えー、やだ」

「授業始まっちゃいますから!」


ものすごく嫌そうな声をあげるフロイド先輩は渋々僕を下ろして、ぎゅうと僕の両手を握る。にぎにぎと何度か強く力を込められてフロイド先輩を見上げた。


「デート、忘れないでね」

「う、……はい」

「あとねぇ、たぶんだけど」


ぐっと背中を丸めた先輩は僕の耳元に口を近付ける。息がかかってくすぐったいと肩を竦めた瞬間、口が開く気配がした。


「トビウオちゃん、オレのこと結構好きでしょ」

「はっ?」

「ほら、真っ赤」


ちゅ、と耳の縁に唇を落とされる。驚いて逃げようとする僕より早く、フロイド先輩に腰を引かれた。またお得意の甘い声で逃げないでと囁かれると、ピクリとも体が動かなくなる。混乱している僕を覗き込んだ先輩はニコニコと笑っていた。
先輩が僕の頬を手で覆って顔を近付ける。咄嗟に目を瞑った僕に降ってきたのは鼻先へのキスで。


「まだしないよ。トビウオちゃんがちゃんとオレを好きになるまでは」


「だから、取っといてね。オレのために」

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作者名: | 作成日時:2022年1月5日 23時

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