魔力よりタバコをくれ 九本目【ツイステ】

裏話、そのじゅういち ページ6

http://uranai.nosv.org/u.php/novel/4abfd60a5121/?p=A&ans=13の裏話です。

side：フロイド

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濃いタバコのにおいがして、それに釣られるように廊下を歩く。シャチちゃんの匂いが薄くて少し不安になった。
こういうときって良いことじゃねーんだ。

足を速めて、においの出所を辿る。急がねーと、なんて逸る気持ちを抑えて歩いていると、シャチちゃんが窓の外を見ながらタバコを吸っていた。
虚ろな表情で機械的にタバコを吸っているから、嫌な予感が的中していることを理解してしまって、奥歯を噛む。

もう1本タバコを取り出そうとしている手を掴んで引っ張った。こんなシャチちゃん、見たくねーよ。


「フロイド、」
「シャチちゃん、疲れたときの休み方も分かんないわけぇ？」


黒い瞳がゆらゆら揺れて、シャチちゃんは考え込むように口を結ぶ。反論させないように、矢継ぎ早に話した。


「タバコばっかり吸ってさ。声カスカスになるよ。つか、もうなってるし」


横目でシャチちゃんを窺いながら、鏡舎へと歩き出す。

何があったかなんて聞かないと分かんねーけど、あの人間のせいだってことは分かる。だって、オレらはシャチちゃんをこんなふうにしないから。周囲の雑魚だって、オレらのおかげで近づかねーんだもん。

ホント、腹立つよな。シャチちゃんに気にかけてもらってるくせに。オレだったら、絶対シャチちゃんに迷惑かけないのに。
甘ったれの雑魚が、シャチちゃんに迷惑かけんじゃねーよ。


奥歯をギリギリと噛んで、苛立ちを抑える。シャチちゃん、転寮してくんないかな。そしたら、いつでも守ってあげれるのに。あの人間だって近づかせないのに。

もっと頼ってよ。

そう言いたいのをぐっと堪えて、オレらの寮に続く鏡をくぐった。

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