ねむれるてんしさま【ブルーロック】 (ページ8)

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06.理屈と本心ページ8

side 千切

眠りに落ちたままぴくりとも動かない透凛さんを負ぶって、絵心探しの旅に出る。

しかしどうしたものか。当てなどないし、このまま透凛さんが目覚めるのを待っているのが最適なのではと思ってしまう。

だけどこうも思える。当然男しかいないブルーロックの冷たい廊下、透凛さんを狙うやつも多いはずだ。透凛さんがこんな所で寝てしまうと分かった奴らの中には、そのタイミングを狙い多少の危害を加える者もいるはずだ。ここから導かれる答えは１つ、透凛さんが廊下で寝た事は誰にも知られてはならない、ということ。

…なんてな。理屈っぽい事をゴタゴタ並べているが…実際は、俺が透凛さんの寝顔を独り占めしたいだけなのかもしれない。

でも、いいよな？入って早々『流氷の天使』と称されるクリオネという渾名をもらった彼女と触れ合える機会なんてそうそうない。この千載一遇のチャンス…簡単に手放してたまるか。

⭐︎

少し歩いたものの、絵心にはまったく会えなかった。すれ違った者に話を聞いたものの羨む声ばかりでまったく有益な情報は得られず。

八方塞がりなこの状況に、溜息が出てしまう。

今の所透凛さんが起きる気配は全くないし…絵心(アイツ)、どこにいるんだよ…。

心の中で愚痴を溢しながらまた歩を進めていると、女の人が慌ててこちらへと走ってきた。

…え、俺の方に走ってきてる？

俺が戸惑っている間にも髪をハーフアップに結った女性は走り続け、遂に俺の目の前で止まった。

「すみません、Aちゃんまた寝ちゃったんですね…！私が責任を持ってお預かりします！」

…え？

この人誰だろう…誰か分からない人に引き渡すのも、あれだよな…でも何だか親しい感じだし、この人は当然ブルーロックの選手ではないし…。

…あ、この人なら絵心の場所知ってるかも。

「えと…すみません、どちら様ですか？絵心さんの場所をご存知だったりしませんか？」

「…あ、すみません！名乗るのが先でしたね！

私は日本フットボール協会の社員でブルーロックの運営に携わっている、『帝襟アンリ』と申します！

Aちゃんとは昔からの付き合いでして…あ、絵心さんの場所はもちろん知っているのでご安心を！」

どうやら結構偉い人だったらしい。この人なら安心して任せられそうだ、女性だし。

そう思った俺はゆっくりと透凛さんを床に下ろし、帝襟さんが透凛さんを負ぶるのを手伝った。