ねむれるてんしさま【ブルーロック】 (ページ31)

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29.言えないもどかしさページ31

side 透凛

その後も久遠さんが得点を決め、遂にハットトリッまで決めてしまう。チームZ優勢に見えるものの、ここまでは全て昨日久遠さんと鰐間兄弟が話し合っていたシナリオ通りだ。

ハーフタイム中も、チームZの楽屋では楽しそうに試合の様子を話していた。そりゃ順調すぎるくらいに試合が進めば上機嫌にもなるよな…。

後半が開始する。チームZボール、雷市さんからだった。雷市さんは久遠さんの声掛けで後ろへと戻す。…やばい、久遠さんに戻しちゃ…！

そう思ったのも束の間、鰐間兄弟の弟の方が久遠さんの後ろから来て、ボールをとっていった。

『…今の明らか、鰐間弟が来てるの分かってましたよね』

「まぁそうだろうな。動きが不自然極まりなかった…演技にしてももっと上手くできるだろ」

『ぼろくそ言うじゃないですか…まぁ私もそう思いますけど…』

鰐間兄弟はあっという間にDFを抜き、ゴールを決める。チームZには少し動揺が走ったものの、久遠さんの「まだ2点差ある」という言葉で冷静さを取り戻したようだった。

しかし久遠さんは裏切りを止めることなく、急に潔さんにバックパスをする…へろへろの。当然意表を突かれた潔さんは一瞬反応が遅れ、ボールはあっという間に鰐間兄弟に取られた後、チームWに2点目が入る。

連続で久遠さんがミスをしたことにより、流石のチームZの中にも不快感を抱いた人がいたみたいだ。…雷市さんとか、雷市さんとか、雷市さんとか。

久遠さんに向けて怒鳴る彼を、國神さんが制す。まるで金剛力士さんみたいな顔をする彼も、土下座には弱かったようだ。久遠さんが急に土下座をした事に意表を突かれたのか、それっきり久遠さんを責めることはしなかった。

…だけど、私は確かに見た。顔を上げた久遠さんの顔に、うす気味悪い笑いが張り付いていたことを。

『…さいあくですよ、あの人』

絵心さんに訴えかけるが、絵心さんは大して興味がないのか何なのか、「大人しくみてろ」とだけ言ってそれ以降何も言ってくれなくなった。…だって、このままだと…。

その後もチームWが優勢の試合が続く。当たり前だ、チームZの武器やら作戦やらは、全て筒抜けなのだから。

もどかしさを感じている私を他所に、チームWは3点目を決めるのだった。…これで、追いつかれちゃったよ。