ねむれるてんしさま【ブルーロック】 (ページ28)

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26.昔のように笑ってくれたらページ28

side 帝襟

絵心さんがAちゃんと電話をしている時に、私は絵心さんの部屋にいた。絵心さんの部屋はAちゃんの呼び方で言うなら『モニターの部屋』なので、Aちゃんが食堂で久遠くんの裏切りを目にした事、それをチームZの人達に伝えようとしている事は分かっていた。

勿論、電話をしている時のAちゃんの様子はきちんと見えている。とても悲しそうな顔をしていて、何をするのが正解なのか迷っているのがよく伝わってきた。

そんなAちゃんにも容赦なく、絵心さんは言った。「ただのマネージャーが余計な事をするな」…と。

Aちゃんはそれを聞いた瞬間、明らかに動揺した。体に力が入ったのはモニター越しにも分かったし、スマホを持たない右手は胸のところで握られている。

Aちゃんは大切なマネージャーだよ。私は確かにそう思ってて、伝えようとしたが絵心さんに遮られる。そうしている間にAちゃんは電話を切ってしまった。

その時、Aちゃんはひどく悲しそうな顔をしていて。あんな顔、2度と見たくなかったのに。

『明日、絶対に負けないでくださいね！約束ですからね…っ！』

Aちゃんはそれだけ言うと、モニタールームから出て行ってしまう。私はそれを見て、居ても立っても居られなくて、絵心さんの部屋を出た。絵心さんが今Aちゃんに対して何を考えているのか、分からないままだけれど。

Aちゃんが行くのはきっと自分の部屋だろう。彼女の部屋の前まで来たが、何の音も聞こえない。心配になって扉を開けるとすぐそこに、体育座りのまま眠るAちゃんがいた。

「Aちゃん？」

声をかけても当然返事はない。布団に寝かせてあげようと思ってゆっくり彼女の体制を崩すと、露になった顔には涙の跡があった。

「…泣い、てる？」

驚いて、つい声が出てしまった。Aちゃんは『あの件』があって、すぐに眠ってしまうようになってから…自分で感情を、抑えるようになった。もともとのAちゃんは、感受性が強くて、感情豊かで、よく笑う…そんな子だったのに。

もちろん今のAちゃんも好きだけれど、昔みたいに笑えるようになってくれれば…そう、何度願っただろう。

…ブルーロックに来て、Aちゃんは変わっている気がする。私のためだけじゃなく、選手の為をひたすらに思って行動する姿はブルーロックにくる前のAちゃんからは想像できなかった。