元攘夷志士、なりゆきで真選組おにぎり隊してます。参 (ページ19)

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続。ページ19

銀時side

話が長くなってしまうので俺達の出会いのシーンは今は割愛させてもらうが、
一言で言うと、其奴はぶっ飛んでる野郎だった。
あの寒空の下、薄い着流し一枚にも関わらずピンピンしていたAは、寒がりの俺から言わせればそれだけで十二分に異常だった。
しかし其奴は松陽に何と言われてついてきたのかは知らなかったが、俺の時に比べると随分と素直で、警戒する事なく風呂に入って、用意されていた俺の着流を着ていた。初めて見た時は汚れが目立ち、よくわからなかったが、風呂に入った事により現れた少女は、まだ幼かった俺ですら息を飲む美しさと、不思議な雰囲気を感じ取ったのを覚えている。
そうして、用意された飯を見た時に、Aは何やら少し考え、貼り付けたような笑みで松陽に向かって爆弾発言を投下したのだ。

『ここまで良待遇して頂かなくても、普通に身体は好きにして良いんですよ？』

一瞬俺は意味がわからなかった。俺と然程歳の変わらないように見える少女からこんな発言が来るとは思いもよらなかったからだ。
チラリと松陽を見ると、困った様に微笑んだかと思うと、そっとAに近づき、優しく少女を抱きしめていた。
それでも尚はてなを浮かべる少女に松陽が、柔らかな声を向ける。

松「貴女はこれまで、自らの身を削り、心を削り、真っ暗な世界で生きていたのでしょう。でもこれからは自分の為だけに生きなさい。その術が分からないのであれば、私と一緒に学び、見つけ、歩んでゆきましょう」

後から直接聞いた話では、星を逃げ出し人身売買の闇企業に捕まり、想像するだけで吐き気すら及ぼす体験を彼女はしてきたようだった。…実際其れを聞いた後の夜、眠れず胃の中のものを出した程である。その時の俺は、この少女が背負ってきたものの大きさに絶句し、何も出来ない己の無力さに苛まれた。

松陽の言葉を、耳にした少女は、そこで初めて動揺を見せている様子だった。譫言のように、『違う』『いやだ』と小刻みに揺れる姿は酷く小さく見えた。それに対し松陽は、優しく少女を撫で続けていた。その後ちっぽけな少女が流した一筋の涙は、残酷なまでに綺麗だった。