ずっと前からオマエしか見てねえよ【灰谷蘭】

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それから何やかんやあってAは無事勤務していたキャバクラをその日付けで解雇。


俺ら灰谷兄弟のセーフハウスで家政婦をすることになり、またあの頃のように共に暮らす日々が始まった。









「なあ竜胆。オレいつもとどっか違わねえ？」



「……は？言動ならいつもと違…、あーはいはい見た目な。

…？………えー、もしかしてそのピアス？」





梵天の事務所のソファーに腰掛ける兄貴は何だいつもより機嫌が良さそうだ。


この歳になっても未だ寝覚めが悪いようで、朝は不機嫌なことも多い兄貴が何故だか今日の朝から随分ご機嫌そうで、本人の前では死んでも言えねえけど兄貴らしくなくて気持ち悪いと思った。





そしてそれを思っていたのは俺だけではないようで、事務所に仕事もせず居座っている兄貴を一瞥して三徹で首領にも負けないほどの濃い隈を作った九井が


「灰谷、サボってねえで仕事しろ」


と声を掛けても兄貴は「えーココちゃんの意地悪♡」と減らず口を叩きそうなものだが、今日の兄貴はやっぱりどこかおかしい。





「はあい」と返事をして文句も言わずに立ち去って行った兄貴を見て、九井は信じられないものを見たように盛大に五度見をかましていた。






「そんでさ、朝から気になってたんだけど何でそんな機嫌良いの？何かあったっけ」



それから自分の執務室に戻って信じられないことに自分から書類仕事に手をつけ始めた兄貴を流石の俺も何か悪いものに取り憑かれたんじゃねえかと思って尋ねてみたのがついさっきの事。






そして兄貴から返ってきた言葉が冒頭に遡る。


いつもと違ったところはないかと聞かれて思わず言動と声を発してしまったが、お馴染みの警棒が飛び出てきそうだったのですぐに見た目の話に切り替えた。






……よく見てみると兄貴の左耳に着いているピアスがいつもと違う。

天竺にいた頃にアイツに預けていたものじゃないかと問うと、兄貴は「正解〜♡」と口角をゆるりと上げた。

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