ずっと前からオマエしか見てねえよ【灰谷蘭】

1 ページ2

「ねぇ、また何かした？バイト先の先輩、先週でまた辞めたって聞いたんだけど」



「はー？知らね、ビョーキにでもなったんじゃねえの」





つい先日私にしつこく言い寄って来たバイト先の先輩が、今日出勤すると先週で辞めたことを店長から聞かされた。



まあ普通ならばふーんで終わる話だ。


けれどどうにも何か嫌な予感がするからこうして幼馴染の蘭と竜胆に聞こうと思って灰谷家を訪ねたのが今日のこと。




もうすっかり通い慣れたもので、自分のもののようにベッド脇のふかふかのソファーに座ると、昼過ぎなのに未だベッドに入り込んでいる蘭は私に背を向けながら適当にそう答えた。

ちなみに蘭が話したくないとでも言うように寝返りを打ったときにした話は必ず嘘。





知らないわけないじゃん、と口を尖らせていると蘭は「寝る」とだけ言って本当に二度寝してしまった。


朝から夜までほんと良く寝るひとだ。

私に見られているのに全然気にした様子もなく再び夢の世界に落ちている。




竜胆も今日はいないみたいだしもう帰ろうかな、とソファーから腰を上げるとガチャリと音を立てて玄関のドアが開かれる音が聞こえた。





「あれ、Aじゃん。何か用？」



「竜胆おかえり。
あのさ、この前言い寄って来たバイト先の先輩がまた辞めたって聞いたんだけど？」




ドンキホーテの袋を手にぶら下げた竜胆は私の話を聞くなり「あー」と蘭のいるベッドの膨らみを一瞬眺めてすぐに目を逸らした。







次回キリの関係で内容が一部重複します。

2→←プロローグ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す