【番外編】彼方の銀世界できみと眠る【鶴丸国永】

祝福のトリツェット3 ページ23

「それはそうとして悔しいから呑みに付き合えよ」



「それは今度ね。……今は一杯だけなら良いですけど」




呑みたかっただけですよね、という言葉は飲み込んだ。


これ、“彼女”だったらお茶の間も凍えるような親父ギャグにするんだろうけど、俺はそんなことしないから。俺は言わば人間界の山姥切長義だから。と良くわからない例えをしてみる。





「何で俺には彼女ができないんだ」




「知りませんよ」





強いて言うなら頼りがいがありすぎて女性から見ると恋人と言うより兄のような存在になってしまうのが唯一の難点だと思う。



たまに藤村さんを雑誌で見た女性が「この人すてき！」と言っていることがあるけど、同時に副音声で「お兄ちゃんみたいで頼りがいがある」と聞こえてくるからもう面白くてたまらない。




確かに俺が女性でも藤村さんとだったら付き合わないかもな、とどうでもいい妄想をする。





駄目だ、全く想像ができない。


どう足掻いても近所のお兄さん的ポジションに収まってしまうのだった。





「俺お前と付き合おうかな」



「何言ってるんですか気持ち悪い」



「上司に気持ち悪いって失礼だろお前！」




「あー、失礼しました」




絶対思ってない。と不満げに呟く藤村さんを尻目に左腕に付けた腕時計の時刻を確認する。あ、まずい。



そろそろ時間だと席を立つと「九条どこ行くんだよ」と藤村さんに引き止められた。

祝福のトリツェット4→←祝福のトリツェット2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す