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『んっー!』
朝起きて、伸びる。
いつもと変わらない天井を見て、
シャワーを浴びて、与えられた朝食を食べる。
これもいつもと変わらない私の朝。
誰とも関わることも交わることもなく。
私は、この吉原でいつもと変わらない日々を送っていた。
『今日も暇だ…。』
窓の外を眺める。
こうして、吉原で太陽が見られるようになったのは最近のこと。
「Aー!」
『神威、おはよう。』
「おはよ。」
神威が窓から遊びに来るのもいつものこと。
「どうしたの?元気ないの?」
『神威、最近の吉原変だよね。いつも夜みたいに暗かったのに太陽が見えるようになった。最近は鳳仙様も見ない。』
「鳳仙の旦那は忙しいんだよ。A、太陽眩しいでしょ?カーテン付けてあげようか?」
『ううん。眩しいけど好き。日輪姉が太陽好きなの。私も好き。』
「そう。」
『私も外に行きたい。』
これを言うと、神威が困った顔をするのはわかっている。
「行かなくていいよAは。ずっと俺の傍にいればいい。それより、聞いてよ!昨日阿伏兎がさぁー」
友達は、神威だけ。
私は物心着いた頃から、吉原にいた。
吉原の女として禿になる事も許されずに、遊郭の最上階に住まわされている。
可愛がってくれていた日輪姉と月詠姉には暫く会えていない。
神威がまた、私を寝かし付ける。
「おやすみA。また明日ね。」
髪を撫でて、窓から消える。
行かないでとは、いつも言えないでいる。
外の世界を私は知らない。
ずっとこの繰り返し。
この日々が永遠に続くと思っていた。
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作者名:月 | 作成日時:2019年3月23日 20時