第152話 貴方 ページ15
「劉さん!やっぱり来てくれると思った!」
満面の笑みを浮かべたエミリアが阿片窟に来た劉に勢いよく抱きついた。特にその腕を振りほどこうとはせず、劉はされるがまま切り出した。
「本当に親子揃って来てるんだね」
「私は阿片じゃなく、劉さんに会いたくて来てるの」
「はいはい。それよりも我が来ることを予想してたってことは、自覚があるってことだよね?」
劉の言葉に満面の笑みを浮かべるエミリア。
そして胸元から銀色に輝く指輪を取り出した。それはずっと劉が左手の人差し指にはめていたもの。エミリアの手からそれを取り上げようと手を伸ばすが、それをするりとかわされた。
おあずけを食らったように感じた劉は、眉間にしわを寄せる。
「返して」
「その前に教えてよ。名前って誰?ここにはいないの?」
「君には関係ないでしょ」
「教えてくれたら返してあげる!……それに、知りたいでしょ?あの日の夜、何があったか」
エミリアの言葉に劉はきょとんとした顔をした後、すぐに笑って興味無いよと冷たく突き放す。
「なっ、なんで!?」
「君さ、阿片の副作用を知ってる?」
「副作用……?知らないわ。だって私阿片には興味なんてないから」
「それと同じさ。阿片“には”興味ない、だからそれがどんなものであっても“どうでもいい”」
最後のその一言が、まるで自分に言われているかのように感じて劉を見上げると顔から笑みは消えていて、冷たく真っ黒な瞳を覗かせてエミリアを見下ろしていた。
怯みそうになるのを必死に堪えてエミリアは劉を睨み返して声を荒らげた。
「っ……それでもいいの!どうでもいいって思われてても、私はあなたのこと好きでいたい!」
「指輪返してよ」
「なんで……っ」
「名前から貰ったものだから」
「!」
ぽつりと呟いたあと、エミリアの手から指輪を取り上げて彼女の目の前で人差し指にはめる。
それを見て劉は満足そうに笑って、袖口に手を入れ踵をかえした。
そしてそのまま出口へと向かっていく。
そんな中、ふと足を止めて劉は振り返った。
「阿片に興味ないならここにはあまり長居しないほうがいいよ。夢が見たくなったら、またおいで」
劉の姿が消えて、エミリアはその場に蹲った。
「……っ、夢なんて、いらない……」
隣に貴方がいないのなら。
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古畑のねこ(プロフ) - oemi200174さん» こちらこそ最後までお読み下さり、本当にありがとうございました……!現在「溺愛、死」のその後のお話を執筆しておりますので、良ければ是非読んで頂けると嬉しいです……! (2022年4月18日 15時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
oemi200174(プロフ) - 最後までありがとうございました!素敵な作品に出会えてよかったです!これからも応援してます!!!! (2022年3月20日 0時) (レス) @page50 id: bdeac365d5 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - しののしさん» ありがとうございます……そう言って頂けてすごく嬉しいです。これからも頑張ります! (2022年1月8日 23時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
しののし - 最高です。更新楽しみに待ってます。 (2022年1月1日 12時) (レス) @page26 id: 969dc0e871 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - アリアさん» ありがとうございます!素敵な最終回になるよう、頑張ります! (2021年12月12日 0時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:古畑のねこ | 作成日時:2021年9月25日 4時