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夏休み明け、涼はみんなに囲まれていた。
短髪にしたから隠れることがない、丸見えの補聴器は皆から見たら痛々しそうで触れていいか分からない状態だったけど、
涼がこれかっこいいっしょなんて言うから皆そのあとの態度は前となんら変わりないものだった。
そういうところが涼の周りに人が集まる所以なんだと思う。
蒼弥には良かったですねって言われたけど、ありがとう。ごめんねっていうと一瞬見せた笑顔じゃない蒼弥の苦しそうな顔。
いつも笑顔を頑張って作ってたんだね。
ありがとう。
年上なのに情けないね。
君がいなかったら私はきっと、
「A?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
ぱっと目の前を見た時には蒼弥はもう居なくて。
井上くんと涼が2人でいたからそこに混ざる。
「それにしても、お二人共よくお似合いだよ」
なんて、呆れた顔で言う瑞稀くんになんといえばいいかわからずそっぽを向く私に対して
「だろ?
俺には、もったい、ないよ」
なんていうから
「私だってもったいないと思ってるよ」
「はいはーい、分かった分かったから。
もう授業始まるから、そんなカップルのいちゃいちゃなんて暑い時に見てられないのー」
まったくもう、くっつくのにどれだけ時間かかってんのー?
そんでくっついたらくっついたでイチャイチャし始めて。
と笑う井上君に色々ありがとうと言うと、本当だよとほっとした顔を私たちに見せる。
「どうやって告白したのさ」
「…ラブレター貰ったの」
というと、涼は恥ずかしそうに言うなよという。
井上くんは今っぽくなくていいじゃん。
今度見せてよというから、いいよと冗談でいうと涼がまじでそれは勘弁と真顔になる。
あなたから貰ったしわくちゃのラブレター。
少し癖の強い大きく書かれた字を何度も読んで、読み返すたびに少し泣きそうになる。
この先何年たっても何十年たってもそれはずっと私の宝物で、二人だけの秘密のもの。
あなたと一緒なら今後何があったってなんだって乗り越えられる気がするの。
本当だよ?嘘じゃない。
あなたが笑っているなら私も笑っていよう。
あなたが悲しいなら私もその悲しさを共有しよう。
あなたが好きと言ってくれたように私もあなたに何度だって好きと言おう。
*意気地無しラブレター 完結*
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ハル(プロフ) - 新作、!!!頑張ってください! (2019年8月19日 0時) (レス) id: a070df98c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひまわり | 作成日時:2019年8月19日 0時