▼ ページ42
「ドキドキするサッカーがやりたい。松風君もそう思うから剣城を練習に誘うんだよ、きっと」
「……ふふ。典子ちゃんも、かなりのサッカーバカだよね」
「それって褒めてくれてるん……? 」
「うん! ほら、帰ろ。天馬達待ってるよ」
いつもより少し時間が遅くなってしまった。夕陽が町に完全に溶けて紫がかっている。
「反田さんまだイナッターに投稿する文章決まらない? 」
「うーん……」
「歩きながら携帯触ると危ないよ」
「そうだよ。適当でいいじゃん! そんな悩む事? 」
「だってもう入部してから五日は経ってるのに、畏まった自己紹介は今更感あるというか、ウケ狙いで一言入れたいというか」
「いいってそんなの入れなくて。また倉間先輩に怒られるよ」
「もう送っちゃえ! 」
「アッ!? 」
信助がジャンプし私の手から携帯を奪うと画面すら見ずに送信ボタンを押す。
『反田典子です! よろしくお願いしまさ』
「ギャーー! 途中で送っちゃったじゃん!! 」
「アハハ! 逃げろ逃げろー! 」
逃げる信助を追う私。後ろで葵ちゃんと松風君の笑い声が聞こえた。
自宅のベッドで寝転がりながら携帯を開くと、さっき投稿した私のコメントへ返信がついている。
「浜野さんだ」
『反田典子です! よろしくお願いしまさ』
『@てんこ まさ? ちゅーか、イナッターやってなかったんだ。よろしくねー』
『@てんこ また煩いのが入ってきた……。サッカーに関係ない事は書くなよ! 』
『@くらま こらこら、そうカリカリしない』
『@はまの お前もだぞ浜野』
「浜野さん……や、優しい……」
さらっと誤字に触れてくれているお陰で、変に滑った奴に成らずに済んだ。
浜野さんはかなりの頻度で投稿しているらしく、しかもその大半がサッカーに関係がない。釣りに誘うコメントが多いが付き合っているのは速水さんくらいで、霧野先輩には断られている。
「典子ー、ご飯よー」
「はーい! 」
お母さんの言葉に返事をして、私は階段を降りるべく部屋を出た。焼き魚の匂いがした。
万能坂戦の前日まで私達は出来る限りの事をした。剣城や先輩達に声をかけたり、必殺技の特訓をしたり、ポジショニングの確認などもやった。
「皆、それぞれの結論は出たか? 」
キャラバンに乗る前、円堂さんが朝日を背にそう言った。逆光で円堂さんの顔には影が入っていて、いつもの陽気な雰囲気とは異なっている様に感じる。
44人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー! あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー!!! あああ一話目から面白そう……!! え、え、めっちゃ楽しみです……!! 更新待ってます!! あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……! (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やに | 作成日時:2021年7月12日 10時