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ファーストシードたる剣城も類に漏れず。そも彼はこうして呼び出されるまで聖帝に会った事すらなかった。
なんて目の鋭さだ──高い位置に座すイシドと剣城には距離があったが、それでも彼の眼力に息を飲む。相対するだけで心まで見透かされかねない、それが剣城のイシドへの評価だった。
「剣城君」
普段の声量で話しても十分過ぎるほど反響するこの広々とした場所に、黒木と聖帝、剣城の三人だけが存在する。
「君の兄さんは手術を受ければまたサッカーが出来るようになるのでしたね？ 」
「はい」
「ですが、海外の最新医療技術を受けるには莫大な費用が必要。普通なら一生かかっても稼げる額ではない」
「手術代、出してもらえるんですよね」
「勿論。我々は君の類稀なる才能と、これまでの行動を高く評価しています。予定通りホーリーロードが成功し、我々の望む結果に終われば、報酬を支払いましょう」
二人の会話には意味がある。契約の再確認と脅しだ。そしてこの確認は、聖帝の前で行う事で誓いへと昇華される。
「ありがとうございます」
フィフスセクターのファーストランクシードともなると、待遇は一介のシードとは全く異なる。他校への受験無し編入や給付型の奨学金、そしてこれらとは別途に個々人が強く求める報酬が与えられた。剣城にとっての報酬とは、兄の手術費だ。
「兄弟……」
静観していた聖帝が一言呟くと、道化の様に身振り手振りで話していた黒木も大人しくなる。
聖帝は微笑んでいた。遠目故に詳しくは確認できないが、剣城の目にはそう映った。
「兄弟の絆以上に、大切な物は無い筈だからな」
「聖帝の仰る意味……分かりますね？ 」
剣城は深く頭を下げる。
「ところで剣城。典子はどうだ」
「……反田、ですか」
突然出てきた名前に、剣城の反応が遅れた。
「ああ。御し難いだろう」
なんて答えればいいんだ──剣城は、反田典子は聖帝が手ずから育てたという噂が真実味を帯び驚くと同時に、彼女を評価するハードルが上がってしまった事で押し黙るしかできなくなってしまった。
「昨日の試合も随分好きに暴れた」
「ッ、申し訳ありません……！ 」
イシドは謝罪の言葉を手で制す。この行為が、剣城の弁明を聞き苦しいと感じたか、それとも別の意図があってのものかは本人にしか分からない。
「剣城」
「はっ」
「典子は『銀』だ」
何の暗喩か、問う事は赦されない。
ただただ剣城は聖帝の言葉を拝受し立ち去るのだった。
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
