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「何が目的だ」──お兄さんがいなくなってから剣城はいつもの刺々しい態度に戻った。
頬スレスレに剣城の足がある。俗に言う足ドンだが、少女漫画チックな雰囲気は皆無で、完璧に絵面はヤンキーに強請られている女子中学生だ。傍から見られたら通報沙汰になりかねない。
「いや、剣城が練習参加しないから、いつもどこ行ってるんだろうな〜って、話してて……決してお兄さんにサボりをチクりたくて来たんじゃないから」
というかお兄ちゃんいたんだね、知らなかったなぁ。ギュー。ごめんお腹鳴っちゃった。ねえこの後皆で豚マン食べに行くんだけど、剣城も一緒に行こうよ。
「……はぁ。相変わらず、お前と話してると疲れる」
大きな溜息をついて剣城は足を下ろした。
「フィフスセクターの指示で兄さんに近づいたんじゃないならいい。さっさと帰れ」
「なんでフィフスセクター? 」
「……何でもねえよ」
「ねぇ待ってよ、どこ行くの」
「俺の勝手だろ」
「一緒に雷門で練習しよう? 次の試合は剣城を出すって、円堂さん言ってたじゃん! 」
「……」
「剣城? 」
大股で歩く剣城がピタリと脚を止める。視線の先には黒いスーツを着た男性が立っていた。見覚えがある、そうだ彼はフィフスセクターの黒木さんだ。
「おや、反田君も一緒だったんですね」
「……何の用ですか」
「聖帝がお呼びだ。ついてきなさい」
聖帝からの呼び出し──剣城が身を強張らせるのが分かった。
「剣城何したの? 」
「フフフ。何かしたのは寧ろ貴方でしょう、反田典子。天河原中との試合、聖帝は咎なしと仰せですがあまり秩序を乱すと『天罰』が下りますよ」
「む……。でも! 私は、本気でサッカーがやりたいんです! 」
「ええそうでしょう、分かっています。だが、その自分本位の考えが他人を苦しめるとは考えないのですか? 」
「え……」
剣城が私と黒木さんの間に入るようにして前へ歩み出る。
「黒木さん。呼ばれたのは俺だけですか」
目を伏せ頷く黒木。
「なら早く行きましょう。聖帝を待たせてはいけない」
「剣城! 」
「しつこいぞ反田! お前は雷門で、精々本気のサッカーとやらをやってろ。……俺を巻き込むな! 」
そういう事ですので、と黒木は帽子を目深に被り直し剣城を連れて行ってしまった。
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聖帝がいる場所は秘匿されている。首都圏である事は確かだが、その正確な住所、経緯度は組織の限られた人間しか知らない。
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー! あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー!!! あああ一話目から面白そう……!! え、え、めっちゃ楽しみです……!! 更新待ってます!! あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……! (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やに | 作成日時:2021年7月12日 10時