▼ ページ21
地面にあるボールにこれでもかと振り上げた足をぶつける。オーラを纏ったボールはまだ飛んでいかない。
最後の仕上げに右手を口に当てた。
「クライムキス」
チュッ、と軽くリップ音が鳴るのを合図にフィールドを抉りながらシュートがゴールへと飛んでいく。……あっ、ちょっと強く打ちすぎたかもしれない！
葵ちゃんだろうか、とにかく誰かが悲鳴に近い声で円堂さんを呼んだのが耳に入る。ペナルティエリア内にボールが迫っても、彼は微笑んだまま必殺技を出す気配がない。怖い、止めれるんだろうか。
「円堂さん！！ ──止めてくださいッ！！ 」
気づけば叫んでいた。砂嵐を起こしていた私のシュートが円堂さんに襲いかかり、黄土の煙がゴール辺りを隠した。急いでゴールへと走ると、土煙の中から円堂さんがボールを片手に出てきた。
「いいシュートだな」
ニイと白い歯を見せ笑う円堂さんの姿に胸をなでおろす。
「その顔、もしかして止められないと思ったのか？ 」
「えと……正直」
だってゴッドハンドも何も出さずにまさか止められるとは思わなかった。自惚れではなく、私のシュートは今まで止められた事がなかったから、円堂さんまで止められなかったらどうしようという不安の方が勝ってしまった。
「ハハハッ！ ……まだまだお前のシュートは強くなる。だから不安がらずに、どんどん本気で打っていい」
「──ならもう一回、試してもいいですか？ 」
自分から出た声が震えているのがわかった。熱を持った体が疼く。伝説のゴールキーパーの名は伊達ではなかった。
この人から必殺技を引き出すにはどうしたらいいだろう？ 必殺技を破るのはもっと楽しいだろう。考えるだけで頭が興奮で沸騰しそうだ。
「駄目だ」
円堂さんの返事を聞くより前に、いつの間にか駆け寄ってきていた神童さんからストップがかかる。
「どうしてです？ 」
「……今の俺達は五人で戦うつもりの動きを身に着けなきゃいけない。個人技を磨くのは後でやれ」
「ん、そうですね」──御もっともな意見だ。
「さっきのシュートを見ていて確信した。反田、お前はフォワードに置こうと思う」
「フォワード！ 」
「不服か？ 」
「いえ！ 今までもまあまあの頻度でやってましたから、不満なんて無いです」
「それは先に言え。さっきの『オールラウンダーです』みたいな口ぶりは一体何だったんだ」
ため息をつく神童さんを見て三国さんは笑った。(って、気づけばゴール前に全員集合してる！ )
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
