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「反田、さっきはフォローしてくれてありがとう。助かった」
「いえいえ、お役に立てて光栄です! 」
「ははっ、光栄って。大袈裟だぞ」
「今度は私にもボールくださいね」
神童さんの微笑みが消える。一瞬でピリついた空気に西園君が心配そうな顔をした。
「それはお前次第だ。シードというのは本当なんだな? 」
「はい! 」
私は首に下げたファーストシードの証を服から取り出した。数多くいるシードの中でも選りすぐりの人材だけが身につける事を許されるこのネックレスは冷たい光沢を帯びている。
「……聞きたい事は山程ある。けど、これだけは確認しておきたい」
「なんでも聞いてください」
「結果を残せないシードはフィフスセクターから処分されると聞いた」──チラと神童さんが視線を移した先には剣城がいた。
剣城は目を伏せ、ぶすっくれた表情でベンチの柱に寄りかかっていたが、視線を感じたらしい。私と目が合うと気怠げにコートを後にした。
「処分が何を意味するのかは分からないが……大丈夫なのか? こんな事、俺が言える立場じゃないんだろうけど」
「心配してくれてありがとうございます。けど、大丈夫ですよ。ね! 松風君! 」
突然話を振られてキョトンとしたが、すぐに破顔しあの一言を口にする。
「──うん! きっと、なんとかなるさ! 」
試合前、彼が私にかけてくれた魔法の言葉だ。松風君はお世辞にも強いとは言えない。けれどもなぜだか、彼にそう言われた瞬間不思議と緊張感は無くなっていた。
「なんとかなりますよ! 」
まぁ、ならない事もある。
「……凄い、静かですね」
着替えと片付けが終わりキャラバンに乗り込むと、そこにはお通夜の様な空気が漂っていた。私は最後列の左側に座らせてもらっているが、これが一人席だったらきっと重々しい雰囲気に耐えきれなかっただろう。
「試合後だしなぁ。全員疲れてんだろ」──水鳥さんが答える。
「私トランプ持って来てるんですけど、やりますか? 」
「お、いいじゃん。茜もやるだろ? 」
「うん。ふふ……典子ちゃん、元気」
「はい! 元気だけが取り柄です! 」
うるせーぞ一年! と倉間先輩に怒鳴られてしまった。手前に座っていた松風君達も巻き添えで睨まれている。(申し訳ない……。)
「朝寝坊したしその分元気有り余ってんだろ。走って帰るか? 典子。なーんて」
「嫌ですよ〜! 片道でも結構しんどかったんですから! 」
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー! あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー!!! あああ一話目から面白そう……!! え、え、めっちゃ楽しみです……!! 更新待ってます!! あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……! (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やに | 作成日時:2021年7月12日 10時