▼ ページ8
「さっさと作って帰りてぇし、お前も手伝えよ。箱入り娘でも洗い物くらいできんだろ」
「だからいらないって」
「カウンターに乗せてる鍋は水洗いな」
「話通じなすぎやしないか君！ 」
エプロンまでしてキッチンに立つ不動。あまり大きい音を出すとまた隣の人に怒られるし、素直に作らせた後に追っ払った方が早そうだ。カウンターに頬杖をついて作業する不動を睨む。
「なに作る気なの」
「パスタ」
「ハンバーグの下に敷いてあるやつか」
「可哀想な認識してやんなよ」
「だってあれ味しなくない？ 」
「味蕾死んでんのか」
手元の鍋で頭をぶん殴ってやろうかと思ったが、不動が包丁を握っているのでやめた。
「いつまでそこで見てんだよ。鍋洗えって」
無視するといつまでも話しかけてきそうなので、渋々シンクの前に立つ。蛇口を捻って水を出すと、勢いが良すぎて飛沫が顔面に跳ねてきた。
「わ、っぷ」
慌てて水を止める。横にいる不動がニヤけ顔でこっちを見ていた。
「……何笑ってんのさ」
「別にぃ？ 」
不動の手元を見ると綺麗に切り揃えられたピーマンとベーコンが並んでいた。さっきまでピーマンは輪切りの状態だったのに、手際がいい。
その一方で、ジャージの袖口を濡らす僕。
今は何を言っても負ける気がしたので、黙々と鍋の表面に水を走らせる。ステンレス製の鍋に映る自分の顔が、酷く情けなく見えた。
その後は僕が手を出す暇もなく、調理開始から二十分も経たずにパスタは完成した。玉ねぎとケチャップの香ばしい匂いが部屋に充満している。
「これお前の分な」
カウンターに綺麗な山型に盛られたパスタが置かれた。中央が頂点になる様巻かれた麺に、チラチラと覗く青々しいピーマン。
「すご」──思わず口から感想が溢れた。
小さい頃によく食べていたお弁当の敷物パスタと全く見た目が違って、戸惑ってしまう。テーブルマナーの授業では和食とフレンチの流れしかやらないから、麺は出てきた記憶が無い。
「早く食えよ」
不動はもう自分の分に手をつけている。
「君も食べるんだね」
「またお前が朝みたいにわざわざ俺の食いかけ欲しがるかと思ってな」
「別に君の食べかけが欲しいんじゃないんだけれど」
「はいはい。じゃあ今回はずっと見張ってたから余計な心配いらねーだろ」
うんざりした様子で言葉を被せてきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか！ ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (
レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました！更新ゆるりと待ってます！！ (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名無し40482号 | 作成日時：2020年10月18日 21時
