▼ ページ18
「影山君」
声のした方を見ると、冬花がハンカチを差し出していた。
「これ、使ってください」
「汚れちゃうけど」
「気にしないで」
やや強引にハンカチを僕の手に握らせてくる。
それとほぼ同時に木野が戻ってきた。
「影山君！ 氷とティッシュ貰ってきたよ」
「持っていていいよ」
「いや、邪魔なんだけど……まあいいか。あとで返すよ」
ジャージのポケットにハンカチを突っ込み、木野からはティッシュを受け取った。
「飛鷹君は一応保健室に行こう」
「……ス」
木野ちゃんの言うことには従うのかよ、という一言をグッと飲み込む。氷嚢を受け取り額に押し当てると、少しだが痛みが引いた。
「鼻血止まりませんね」
「気持ち悪くない？ 」
「大丈夫」
「でもぶつけただけでこんなになりますかね？ やはりどこか大きな傷だったり」
「煩いなぁ、僕が大丈夫って言ってんだけど。近くで騒ぎ立てないでくれないかなぁ」
目金がヒィと情けない悲鳴を上げる。
鼻血が止まってもすぐに動く気になれず見学していると、久遠さんが練習を止めるよう選手たちに声をかけた。
「あ、もうお昼の時間だ」
横で冬花が呟く。もうそんなに時間が経ったことに驚いた。ずっと木陰にいて、太陽の動きをあまり感じなかったせいだろう。
「影山君の分もあるよ。食べれそうかな？ 」
「うーん、あまり食欲ないかもぉ」
食欲はあるが、他人が用意した物を食べるのはやはりまだ怖い。脳裏に昔の嫌な思い出がチラつく。
「よ、影山」
いつの間にか不動が目の前に立っていた。スポーツドリンク片手にユニフォームで汗を拭う姿から、今日の日差しの厳しさを窺える。
「どうしたんだ？ その鼻血」
薄笑いを浮かべながら聞いてきた。相変わらず腹が立つ笑い方だな。
「転んだ」
「だっせ」
「それだけ言う為に僕に話しかけに来たのかい？ 」
「あぁ」
「暇人め」
「お前の方が余程暇人だろ」
「分かったぞ、君、僕以外に構ってくれる子がいないのか？ 可哀想に」
溶けきった氷嚢を不動に投げつけるが、楽々とキャッチされてしまった。
「仲良いんだね」
黙っていた冬花ちゃんが口を開いたと思えば、信じられないことを言い出した。
「良くない」「良くはねぇ」
否定したら見事に言葉が被る。
「ふふっ」
「おい、笑うな」
「ごめんなさい。二人とも必死なのが……余計に面白くて」
何を言っても無駄だと察したらしく、不動は不服そうな顔で黙り込む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか！ ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (
レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました！更新ゆるりと待ってます！！ (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名無し40482号 | 作成日時：2020年10月18日 21時
