◆ ページ6
支給された制服に袖を通し、リボンを結ぶ。二年生のリボンは水色の指定だが、保護者の意向により私は特別仕様の黒のリボンを付ける事になった。たかが学年が分かるだけ、とはいえ他人にむざむざ自身の情報を与える行為は控えるべき。自衛して損はしないとの考えだろう。
教室へ向かおうとしたその時、イレブンバンドが鳴り、通話が開始された。扉の窓から廊下を覗き人影が無い事を確認し応答する。
『一角』
「はい、黒雲一角です」
『この後はクラスミーティングだったね』
「はい」
『剣城には放課後、理事長と話すよう言ってある。君は部室に行って雷門イレブンの動向を見ていて』
「承知致しました」
『頼んだ。……雷門に化身使いが出た影響で慌ただしくなりそうだよ』
「神童拓人ですか」
『ああ。しかし、彼は去年から注目を浴びていたからね。彼単体には大きな影響力はない。今だってCMでよく見かけるだろ? 』
「申し訳ございません、分かりかねます」
『そうか。とにかく問題は……』
「……問題は? 」
『これが序章に過ぎないと言う事さ』
真上のスピーカーから予鈴が響いた。
『そろそろ時間か。そうだ、折角新しい学校転校したんだ。楽しんでくれ。どうせなら神童とも仲良くするといい』
「はい。お心遣い痛み入ります」
『お心遣い、って。そんなに難しい言葉じゃなくて普通に話しかけてくれたらいい』
「それでは他のシードに示しがつきませんので」
『真面目だな』
「お褒めの言葉として、謹んで拝領いたします」
『あぁ、いけない。私が話しかけていたら君からは通話が切れないか。気が利かずにすまないね』
「滅相もありません」
『それじゃあ、頑張ってくれ』
「はい。貴方様の……
教室はクラス替え直後の熱気で充満していた。私は黒板に書かれた席表から己の名字を探し出し、机へと向かう。いかにマンモス校とはいえ全く見覚えのない人間である私という存在に気づいた者から、徐々に口数が少なくなっていく。
ホームルームの開始を知らせるチャイムに周りのクラスメイトが急いで自分の席に戻った。しかし依然として私の隣席は無人である。
「あれ。誰か、神童がどこ行ったか知ってる奴ー」
担任が私をチラと見ながら、隣の空席を指差した。そうだ。私の隣の席は神童拓人その人であった。
さて、どう説明するか。
彼は疲労により倒れた、しかし、その後どこに運ばれたかを私は知らないのだ。
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しけ(プロフ) - 予備肉さん» ごめんね! (12月27日 2時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
予備肉 - 読みにくい (12月27日 2時) (レス) id: a7f9da8f5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しけ | 作成日時:2023年7月6日 23時