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「松風! 無茶な事を」
神童が駆け寄り倒れた松風を抱き起こす。ぐったりとした松風が、神童のユニフォームに描かれたイナズママークをくしゃりと握った。
一言二言、何か会話を交わした後、神童が立ち上がる。彼の頬に涙が伝っているのは遠目からでも分かった。
ぞわりと肌が粟立つ。
「ちくしょおぉぉォォッ──!! 」
原因は神童だ。咆哮する彼の背から、化身が現れていた。本人に似たウェーブの髪。指揮者のタクトを持つ気品のある姿。しかしながら四本も伸びる腕が、ソレは人ならざる存在であるのだと、こちらへと警告している。
どちらの陣営も二体目の化身の登場に戸惑っている。咄嗟に黒木氏へと視線を向けるも氏は才能が開花した現状に酷く興奮しているらしく、こちらへの指示を出す気配は無かった。
「キャプテン! 」
「退け」
「でも」
「退け!! 」
神童が松風の静止を振り切ってこちらを睨む。
「剣城さん」
呼びかけるも彼は特に返事をしなかった。代わりに腕のイレブンバンドが音を立てる。
「……」
私は周りの選手に下がる指示を出して、二人から距離を取った。
「俺はキャプテンなんだ……サッカーを守らなくちゃならないんだ!! 」
「出来るかな? 潰してやる。この俺が! 」
剣城さんはそう言い終わると化身の力を乗せたボールを神童へと打ち出した。彼も四つ腕の化身を用いて蹴り返す。
化身と化身の激突により辺りには風と電撃が巻き起こる。神童が打ち上げたボールは私の真正面へと飛んできた。危ない──松風の声が微かに聞こえた。
私は
「何してんだ」
「イレブンバンドをご覧下さい」
苛立ちながら剣城さんはイレブンバンドを確認した。神童の警戒をしていたので黒木氏からの指示を見ていなかった様だ。
「試合はここまで。撤収します」
「逃げるのか! 」
黒木氏に殺気立った神童が噛み付く。
「逃げる? 見逃すと言ってもらいたいですね。しかし結果としては、貴方の存在が雷門を守ったと言う事になりますかな? 神童君」
本来なら雷門イレブンはこの試合を最後に全員退部し、シードである我々黒の騎士団と総入れ替えの形で『新生雷門イレブン』となる筈だった。黒木氏の口ぶりから察するに、神童の化身発現によって現雷門中の価値が上がり、一考の余地が生まれたのだろう。
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しけ(プロフ) - 予備肉さん» ごめんね! (12月27日 2時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
予備肉 - 読みにくい (12月27日 2時) (レス) id: a7f9da8f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しけ | 作成日時:2023年7月6日 23時