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「私は雷門イレブンなんだから、海王の奴らのシュートを止めるのは……当然じゃない？ 」
「そ、そう、だね。でもさ、オウンゴールしたのは？ 」
「？ 皆とサッカーしたいからだよ」
松風が絶句する。同じ言語を使っているのにまるで話が通じていない。会話を聞いていた西園が二人の困った顔を見比べた。
剣城は遠目でそんな二人の様子を見て冷や汗を流す。彼の中の反田典子と、視界にいる反田典子の在り方に微差とはいえ違いがあったからだ。
ゴッドエデンにいた頃の彼女は、強い選手──剣城を見つけたらその他の選手には目もくれなかった上に、所属しているチームの勝敗など微塵も気にしていなかった。
だが今の彼女はかなり歪んだ認知を基盤にしているとはいえ、雷門イレブンとしての自覚を持って行動している。
「……」
ゴッドエデンの時と、何が違う？
「なんだ、何なんだ一体……！ 」
神童と剣城がそれぞれ化身を用いてクライムキスがゴールへと向かうのを防ぐ。
『こ、これはどういう作戦だ！？ 雷門、反田がシュートを打っているのは自陣のゴール！ それを全員で止めている様に見えます！！ 』
「典子ッ、この……！ いい加減に、しないか──！！ 」
弾かれたボールでシュートを打とうとする反田をマエストロが光の輪で捕まえた。
「うわっ！？ ええすごーい！ マエストロってこんな事も出来たんですか！？ 」
「っ……！ 浜野！！ 」
「ほいよ！ 」
緊張感のない反応が神童の神経を逆撫でる。追い打ちをかけたい気持ちを抑えて、神童は彼女を捕まえている内にボールを浜野へと回した。しかしタイミングが悪く浜野の前には海王選手が迫っている。
「精鋭兵ポーン！ 」
ここに来て海王学園の三体目の化身が現れた。
「なッ……！ まだ化身使いが潜んでいたのか！？ 」
化身の使用は体力の消耗が激しい。剣城も神童も松風も酷く消耗していて、更に反田がどう動くのか予想がつかない最中に現れた化身。雷門の目にはとてつもなく強大に映った事だろう。
化身のドリブル技、マシンガンビートが浜野へ雨の様な拳を振り下ろし続けた。
神童がカバーに入ろうと反田から目を逸らした瞬間、風に乗って甘い香りが鼻を擽る。その香りの正体は反田の残り香だった。
「なんや、ゲロ弱やんけ！？ 期待して損した……！ 」
精鋭兵ポーンを発動した化身使いが、キーパーと仲良くゴールネットに押し込まれている。
３ー３の、同点だ──
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
