Ｎｏ．１２【inzmGO】CEN (ページ44)

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『雷門遂に同点に追いついた！オウンゴールの失敗を、怒涛の勢いで取り返しているぞ反田典子ーーッ！』

　観客からの声には罵声が混じっている。そんな声も聞き慣れたものらしく、反田は涼しい顔をしていた。今のところなんとか彼女のシュートを防げてはいるものの、雷門には同点を喜ぶ余裕は残っていない。

「俺達から三点も……！そんな事、ある筈がない……あっていい筈が、ネェだろうがあぁアアア！！」

　海王学園のキックオフで試合が再開した。ボールを受け取ると浪川はそのままポセイドンを出し突っ込んでくる。後半の残り時間もかなり減ってきていた。焦りと怒りが、とうに限界を超えている浪川の足を動かす。

「反田、剣城……ッ！テメエらはここで、俺が潰す！！シードの誇りにかけて──」

　ランスロットの大剣と、ポセイドンのトライデントが鈍い金属音を立てて打つかった。浪川に気圧された剣城は苦し紛れにボールを上へと逃がす。そのボールに飛びついたのは西園だ。

「信助！こっちだ！」

　浜野が声をかける。

「……っ、──典子！」

　しかし、西園がパスを出した相手は反田だった。
　雷門のメンバーに衝撃が走る。

「もう一点、取りに行こっ……！」
「馬鹿が……！」

　みすみす地雷に触れる様な西園の行動に剣城が顔を顰める。案の定典子は西園からのパスを、松風へ蹴りつけた。
　狩屋の網が、霧野の霧が、天城の壁が雷門のゴールを守る。三つの必殺技が敗れた後は松風が必死に蹴り返す。弾かれたボールが海王に渡れば車田が取り返し、また前線に繋ぐ。

「速水！」

　車田から速水へとボールが渡るが、既に足元にはベルセルクの蜜が広がっていた。背筋に悪寒が走る。ボールの落下地点を予想して近寄ってくるにしても、この距離を、いつの間に詰めていたのか──

「ボールください、速水さん」

　普段と変わらない反田の笑顔が、却って速水の恐怖を煽る。

「速水先輩！！」
「速水！無茶すんなッ！」

　松風と浜野が叫んだ。

「……無理ですよ」

　速水が地面に蹲る。

「ッ、あ──！」
「だって皆こんなに頑張ってて、松風だって化身を出したんだ」

　やってみなくちゃ、できるかできないかなんて分からない。化身相手でもシード相手でも。俺だけ逃げるなんて、できません！

「ゼロヨン──！」

　油断していたのを加味しても反田を抜いた速水の足は本物だった。そのままドリブルで駆け上って行くと、速水は剣城へパスを出す。