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「そう簡単に手の内を見せる馬鹿がいるかよ。決めろ浪川！ 」
「お前ら如きを倒すのに技はいらねえ！ 行くぜッ……！ 」
浪川と呼ばれたキャプテンにボールが渡る。今度は雷門の選手に当てる為ではなく、シュートを決めに蹴ろうとしているのが彼の殺気から伝わった。
「止めて天馬！！ 」
途中から来た私は行く末を見守る事しかできない。松風、神童先輩、倉間先輩、三国先輩の四人に剣城の運命が委ねられている。折角、折角剣城が雷門の一員として認められたばかりだと言うのに、こんな奴らに本気のサッカーを奪われてたまるか──！
松風が強く足を踏み出すと、以前一度目にした強風が彼の身を包んだ。そしてそのサイクロンは彼だけでなく浪川をも飲み込み吹き飛ばす。
「あれ！ 松風のディフェンス技じゃない！？ 」
スパイラルドロー、そう円堂さんによって名付けられていた必殺技が完成したのだ。そして必殺技が発動する前、ほんの一瞬松風の背から化身の黒炎がチラついた。
「や、やった……！ 出来たんだ、スパイラルドローが！ 」
「やったね天馬！！ 」
純粋に喜ぶ松風と信助の姿を浪川が睨む。
「おい！ まだ試合は終わっていないぞ……！ 」
「キャ、キャプテ〜ン！ お電話でーす！ 」
「何だ！ こんな時に……」
浪川が通話中は海王の選手の動きが止まった。松風はボールをしっかりと足元に置きつつ、警戒を怠らない。いつ試合が再開されるか緊張で張り詰めた空気の中、浪川が通話を終えて味方に怒鳴った。
「野郎共！ 引き上げだ！ 」
「え！？ そりゃねえぜキャプテン！ 」
どうやら試合は中断するらしい。
「逃げるの？ 」
典子ちゃん、と両脇から窘める葵ちゃんと信助の静止を無視して私は浪川の元へと歩み寄る。
「あ……？ 勘違いしてやがるな、この裏切り者が。いいか、イシド様がお前も剣城も放っておけって言ってんだ。俺達はシードとして処罰を下しに来ただけだ。弱者と遊んでやる趣味はねえ」
「私がいないの見計らって来た癖に」
「……んだと？ 」
頭に血が上って、顔が熱を持っているのがぼんやりと分かった。
「止せ典子！ 」
「つ、剣城」
「試合でやれ！ 」
海王の奴らに拘束されていた剣城が、奴らの手を振り解いて私と浪川の間に入った。
「フィフスセクターを裏切った事、後悔させてやる……！ 」
浪川は私と剣城を交互に睨んだ後、大きな舌打ちをして踵を返す。
「いいか雷門！ 次の試合、お前達の首は貰うぞ！！ 」
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
