Ｎｏ．１２【inzmGO】CEN (ページ12)

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「円堂さんのウチ！？」
「いいんですか！？」
「おぉ、来いよ！」

　これは凄い事になってきた。毎日顔を合わせていると感覚が麻痺しがちだが、円堂さんはあのイナズマジャパンの円堂守な訳で。そんな有名人のお宅に招かれるとか……明日信助に自慢しよっと。
　円堂さんは携帯をポケットから取り出し誰かと通話を始めた。

「あっ、俺だ。今から客を連れてく。サッカー部の部員だ。晩飯二人分追加できるか？そっかそっか、ありがとな。じゃあ後で」
「あ、あの……今のって？」
「俺の奥さん」

　奥さん。……奥さん！？
　松風と私は揃って硬直する。

「ん？」
「円堂さんっ」「監督っ」
「え？」
「「結婚してたんですかァーー！？！？」」

「おーい帰ったぞー！」

　円堂さんの自宅は閑静な住宅街の中にあった。新築と思しき家に足を踏み入れると、檜に混じって晩御飯のいい匂いがする。
　パタパタとスリッパを履いた足音がしたと思えば、リビングから柔らかい茶髪が特徴的な美人さんが現れた。
　この人が円堂さんの奥さん……！

「おかえり円堂君」
「こ、今晩は！」

　松風が緊張の影響で吃りながら挨拶をした。

「ただいま。客っていうのはコイツら。ほら、自己紹介」
「松風天馬君ね？隣の彼女はもしかして、……反田典子ちゃん？」
「は、はい！」
「お邪魔します！反田典子です！」
「ふふっ、いらっしゃい。円堂夏未です。いつも円堂君から聞いてるから、すぐに分かったわ」

　私達はおっかなびっくりに靴を並べる。
　客人用のスリッパへと履き替えて、リビングへと通されると料理の香りがより一層強く鼻を擽った。
　食卓に案内され眼前にずらりと並べられた料理を観察する。煮物と積み上げられたローストビーフ、エビフライ。これなんだっけ、スライムみたいな……あっ、テリーヌだテリーヌ。和洋中網羅する勢いの品数に円堂さんは若干苦笑いだ。

「はぁ〜…ホントに頑張ったなぁ〜……」
「育ち盛りさんが二人も来るんだもの。このくらい食べられるわよね？」

　夏未ちゃんはおにぎりが山ほど積まれた皿持ってくる。

「食べます！すっげー……！旨そう！」
「いただきまーす！」
「おー、食え食え！練習の後の飯は旨いもんな！」

　串物を円堂さんが頬張ったのを合図に私もテリーヌへと手を伸ばした。

「こんなオシャレな食べ物家じゃ出た事無いです！」

　切り分けられたそれを一切れ口へと放り込んだその瞬間、謎の生臭さに目が眩んだ。