6 裏切り者 ページ26
6 裏切り者
「──で、ですよ!? 松風ってばその後懲りずに公園で特訓するって言うから、木枯らし荘まで私が引っ張って行ったんです! 」
「へー大変だったな〜」
「あのー浜野先輩」
松風は困った顔で私と浜野先輩の会話に割って入る。
「何で俺達釣りをしてるんですか? 」
「そりゃー、そこに魚がいるからだ」
私達は河川敷で川釣りをやっていた。
あの日以来ずっと松風は化身と必殺技の特訓を続けたが、どちらも全く進展していない。化身は私と神童先輩、必殺技はその他の皆で松風の特訓を支援しているのだが、却ってそれが重荷になっているのやもしれない。
「ちゅーか天馬。悩んでるだろ? そういう時は釣りが一番だぜ! 」
と言う事で、円堂さんと神童先輩から許可を貰った私達は、放課後の時間を使って浜野先輩の提案(名付けて「川釣りで雑念を飛ばそう! 」計画)に従う事になったのだ。
「……はい。どうやったら化身を出せるのか……、海王との試合まで、あと数日しかないのに、なんとかしなきゃって焦っちゃって」
「海王は全員シードだって言うしな〜。でもほら、雷門には神童とか化身出せる奴がいっぱいいるんだし、お前が化身出せなくても大丈夫だろ! ちゅーか、ちょっと前まで都市伝説の存在だったんだぜ? そんなポンポン出てきたらびっくりだって、なあ典子! 」
「そうですねー……私だってそんな、化身を使える人にいっぱい出会った訳じゃないですし、大体化身出せても弱い人は弱いですから。そんなに拘る必要も無いと思うよ? 松風。いやまぁ、化身の特訓をしようって言い出したのは私だけども」
「流石。生身で神童のマエストロぶっ飛ばしちゃう奴が言うと違うなー」
「エヘヘ。ま、一先ず化身は置いといて、必殺技に集中したら? もしかしたら必殺技が出来たついでにうっかり出てきちゃったりするかも! 」
「そんなオマケみたいに」──松風が呆れ笑いを浮かべた。
「実際オマケだよ。だって化身を出す事が松風のゴールじゃないじゃん? 」
松風と浜野先輩が神妙な表情で私を見た。
「そっか……、ちょっとだけ分かった気がする」
「ホント? ……あ、そうそう! 先輩これ見て見て! 綺麗に餌付けれました! 」
「おー、後は食い逃げされない様に気をつけるだけだな! 」
釣りも二回目ともなれば、いかに要領の悪い私だって成長する。
「ハッ! 早速手応えが! 大物じゃあ!? 」
「あ、根がかりだわ」
「えーガックリ……」
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作者名:やに | 作成日時:2022年9月11日 21時