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「何だその笑顔はー！ 」
「もう、典子ちゃん、信助！ ちゃんと掃除してよー」
私達は昼休みの時間を使って旧部室を訪れていた。古株さんに頼まれて例の段ボールをここへと持ってきたはいいが、中々に埃が溜まっていたので自主的に掃除をしているという訳だ。
「そういえば信助君、必殺技完成したんだってね」
「そう！ 先輩達にも手伝ってもらってさ」
「へぇー、休みの日なのに頑張るなぁ」
「狩屋は日曜日何してたの？ 」
「俺？ うーん、宿題とか」
「真面目！ 」
「ははっ、どうも」
狩屋君は穏やかに笑った。
「そう言えばこの間のテスト返ってきたよね、どうだった？ 赤点あった？ 」
「まさか。赤点取ったら補習だよ？ 」
「今はどの部活も大会で忙しいから、補習受ける人結構いるみたいだけどね」
ふと壁に視線が行く。
「絶対優勝！！ 」と大きく書かれた文字と、それぞれの寄せ書きが掠れた状態で残っていた。吸い寄せられる様に近寄り、まじまじと見ていると松風が話しかけてくる。
「勇気貰えるよね」
「うん……」
ここから稲妻伝説が始まった。
円堂さんがきっかけになって広がっていったサッカーの夢は、十年後の今もこうして当時の面影を残して存在しているんだ。きっとこの頃の雷門イレブンも私達の様にがむしゃらになってサッカーをしていた。
「次の試合も、本気で頑張ろう」
「あぁ！ 」
「……なんとか、しなくちゃね」
殆ど独り言の様な私の言葉に松風が生返事をする。遠くの方で昼休みの終わりを知らせる予鈴が鳴った。
稲妻総合病院。この三階３１５室に剣城優一が入院している。
「そんなに見舞いに来なくていいんだぞ。気を遣うなって」
「気なんて使ってないよ、兄さん」
「練習があるだろ？ 勝ち進んでるんだからさ。ほらあの子、典子ちゃん。また迎えに来ちゃうんじゃないか？ 」
「必要な練習には行ってるから」
「……次は準決勝か。全国大会、行けるといいな」
「あぁ……」
「どうした？ 最近元気が無いぞ」
「っ、フ……そんな事ないさ。水、飲んでくる」
「ぅあ、あの……」
突然響いた松風の声に剣城が動揺の滲んだ声を出す。
「お前……！？ 」
「君は、天馬君？ 何だやっぱり君も弟と知り合いだったのかい？ 」
「えっ、弟！？ 剣城が……？ 」
「そうかぁ、そうだよな。二人共雷門サッカー部なんだもんな。考えてみれば当然だな」
「お邪魔してすみませんっ、改めまして、その。雷門中サッカー部一年の松風天馬と言います」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
