Ｎｏ．１２【inzmGO】BEORC (ページ26)

今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:6,688 hit

４　剣城京介の銀貨ページ26

４剣城京介の銀貨

「良かったな、チームの雰囲気が良くなってきて」
「ああ。皆本気で勝とうと思ってる」

　霧野と神童は二人教室の窓際に佇み言葉を交わしていた。

「早く練習したくてウズウズするよ」
「焦るなって。あとニ、三日の我慢だろ？」
「だけど、頑張ってる信助を見ると負けられない」

　神童には親友の本心が分かっていた。
　焦燥に駆られているのだ。狩屋の入部に西園の必殺技習得。自分は何も出来ていないという負い目と、あの日の出来事による動揺が霧野の心を蝕んでいる。

「……そうだな。アイツの頑張りを、必ず勝利に繋げよう」
「頼むぜ、キャプテン」

　気づかないふりを突き通す神童に、霧野は意を決して問いかけた。

「なんで嘘をついた(・・・・・・・・)」
「──」

　神童が咄嗟に周りを見渡す。幸いにも昼休みの教室には他の人間の影は無かった。

「アルティメットサンダーの作戦書は空きロッカーに入れていた筈だろ」

　アルティメットサンダーの作戦書が元々神童のロッカーに入っていたのは本当だ。しかし最近になって南沢が使っていた空きロッカーに移していた。だから神童以外も自由に閲覧できる状況で──盗める状況で──それを知っていたのは片付けを手伝った霧野と音無だけだ。

「浜野が気づかなかったから良かったけど、一歩間違えたらお前まで変な疑いを」
「だが、そう言わなければ浜野もお前も守れなかった！」
「神童……」
「今はチームの大事な時期だ。何か言われたら、作戦書は俺がお前に預けていた事にする」
「なぁ」
「言うな霧野。これ以上はいくらお前でも許せない」
「……分かった」

　シードとは、フィフスセクターから各学校に送り込まれた監視役だ。剣城の様に力でねじ伏せ恐怖で支配する者もいれば、隠密に行動しチームを影からコントロールする者もいる。
　後者であれば今回の不可解な行動に説明が付く。チームの不和を狙った計画だとすれば、確かに主将の親友である霧野は狙われやすいだろう。何より万能坂戦で雷門が一斉にフィフスセクターに反旗を翻したのも、彼がきっかけと言っても過言ではない。
　雷門には、剣城、反田に続く三人目のシードが潜んでいるのでは──

「クシュッ！」
「ハックシュッ！ ……ちょっと、埃っぽすぎない！？」

　狩屋君に釣られる様にしてくしゃみが出た。

「夏風邪だったりね」
「えぇ？典子ちゃん風邪引くのぉ？」

　信助がほくそ笑む。