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「だからこの話するのやめましょうって！ 」
「アハハー。いや、でも実際マジでなんなんだろう。……俺、あの後こっそり神童に聞いたんだけど、部活始まるまでは確実にロッカーにあったらしいんだわ」
「なら部活中に、って事ですか！？ 」
これは速水さんも知らなかったらしく、目を丸くしている。
「そ。でもそうなると、サッカー部の奴は犯人じゃないって事じゃん？ だって部活中だから霧野もベンチで見学してた訳で」
「た、確かに！ ん、じゃあ誰が？ しかも盗むんじゃなくて霧野先輩の荷物に入れるだけって、どういう事なんです？ 」
「さあ？ もう訳わかんなくなっちゃうよな。ま、作戦書は手元にあるんだし、大事にならなくてよかっ」
「アッ！ かかってますよ浜野先輩！！ 」
浜野先輩がお手上げのポーズを取っていると、立てていた竿がグワンとたわんだ。
「よっしゃー！ 一匹目ー！ 」
三人で騒ぎながら釣り上げると、それはそれは見事な鯉だった。
「あ。おーい！ 二人共ー！ 」
グラウンドでいつもの様に特訓している二人に声をかけると、先に松風が気づいて手を振ってくれた。
「頑張ってるね」
「聞いてよ反田！ 遂に信助のぶっとびジャンプが完成したんだ！ 」
「えっー！？ ホント！？ 」
「今からもう一回やるから見ててよ、僕のぶっとびジャンプ！ 」
自信満々にそう言って、披露してくれたのは驚異的なジャンプ力と……ただのヘディング。
「どう？ 」
反応に困り笑顔で固まっている私を助けてくれたのは予想外の人物だった。
「いや、駄目だ。それじゃまだ完成とは言えない」
「三国先輩！ 」
三国先輩だけではない。車田先輩と天城先輩もいる。
「あれ、アルティメットサンダーは……」
「神童がピアノのレッスンに行ったから、そのタイミングで終わらせてきた」
神童先輩ピアノやってるんだ。全然意外じゃなくて逆にびっくりする。
「まだ完成じゃないって、どういう事ですか？ 」
「ジャンプもヘディングも最高のタイミングだったと思いますけど……」
「試合なら、ゴール前はもっと混戦になる筈だド」
「周りに他の選手がいる中でも使える様にならなきゃ、完成とは言えないだろう？ 俺達も手伝う。俺達三年には……このホーリーロードが最後の大会になる」
「……絶対に優勝したいんだ。自分達の力で。それに、信助の必殺技が出来ればチームの強化にもなるからな。一緒に完成させよう」
「先輩……！ ありがとうございます！ 」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
