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浜野先輩が奪ったボールは神童先輩へと回り、再度アルティメットサンダーが打たれたがまたしても不発に終わってしまった。
「また……なぜだ！？ 」
「ちゅーか、どうなってんの？ 」
私の様に溜めたエネルギーが蹴った影響で無くなっているって訳じゃない。何でだ？
「まさか手を抜いてたりするとか」
「そんな！ 」
速水さんの言葉に信助が困った表情をする。いつもは剣城に否定的な態度を取っているのに、こういう試合の時は味方であってくれるから信助は何やかんや良い奴なのだ。
「アイツ、雷門を負けさせる為にわざとミスしてるんじゃ」
「わざわざそんな事しなくても、間違いなく倒してやるよ！ 」
倉間先輩を挑発しながら、相手ディフェンダーが攻めてくる。
「反田は下がり過ぎです！ 持ち場を離れないでください！ 」
「へ？ 」
「あ……」
戸惑っているのは私だけではなかった。会話が聞こえていたらしい神童先輩も驚いた顔をしている。あんなに怯えていたのに速水先輩の口から勝つ為の指示が出てきたんだ。
「分かりました！！ 」
「アワワやってしまった……！ まだ俺はフィフスセクターに逆ら」
「守備お願いします！ 」
「ヒエえっー！？ ちょっと！ ま、待ってください！ 」
「諦めろ速水！ ほら敵来てるぞ！ 」
私はマークを一人一人いなしながら前へと走る。速水先輩と霧野先輩がボールを奪ってくれるなら、きっと次こそ剣城がアルティメットサンダーを決めてくれる筈だ。
霧野先輩が万能坂戦でも見せてくれた必殺技ザ・ミストでボールを取ると、アルティメットサンダーの準備の為に一度剣城へとパスを回す。
『おっとここでトラップミス！ ボールは龍崎の元へ！ 』
らしくないミスだ。完全に集中力が切れてる。
本気でサッカーやれてない。
「──どうしたんだ剣城！ 」
松風が龍崎からボールを取り返そうとタックルを仕掛けるが、軽々と交わされて遊ばれてしまう。
「今のお前、ちゃんとサッカーと向き合ってない！！ ぐぅあッ……！ 」
勢い良く転倒した松風に、私は反射で目を逸してしまった。痛そうな音がしたけれど、摩擦で腕がやられていないだろうか。
「そんなんじゃ、サッカーが泣いてるよ！！ 」
サッカーが泣いている──サッカーは人じゃない。だけど松風のこの言葉を不思議に笑う気にはならない、なれない。
剣城にとってのサッカーってなんだろうか。
「剣城！！ 」
私は観客席を指差して叫んだ。
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
