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「ほらよ」
倉間先輩に作戦ボードを渡される。先輩は１７(私の背番号だ。)と書かれたマグネットを指でスライドさせた。
「いいか、またこの前みたく逆サイドに走ったりしてみろ。二度とお前にボールは回さねえ」
「はっ、はい！ 」
「それと剣城。お前は中央だ、神童が合図したらすぐ下がれよ」
「……」
「剣城ー返事はー？ 」
安定の無視である。
作戦を粗方聞き終わると剣城はさっさとグラウンドへと行ってしまった。
「……チッ。分かってんのかよアイツ」
「作戦自体は大丈夫ですよ。剣城ずっと見てましたから」
「フン……見てた、か」
『帝国学園のキックオフで後半開始です！ 』
フォーメーションはぱっと見フォワード三人の攻撃特化だが、アルティメットサンダーを蹴る為に剣城が下がる為実質二人でゴールを狙う事になる。
「反田、今まで何をしていた」
私をマークしに来た相手が忌々しげに呟いた。ボールを取りに行こうとするがピッタリと二人掛かりで纏わりつかれて鬱陶しい。
「シードとしての役目を果たせ！ 雷門を完膚無きまでに潰す、我々の手伝いをしろ」
「お断りです！ これから私三点も取らなきゃなんですから！ 」
「このッ……！ 」
「あ。いいぞ剣城ー！ 」
二人のマークから抜け出して視界に入ってきたのは剣城がボールを奪っている姿だった。彼はそのまま下がりながら神童先輩へとボールを回す。
「これでハッキリした……！ 剣城は完全にフィフスセクターを裏切った！ 」
「倉間、典子！ シュートは頼んだぞ！ 剣城！ やり方は分かっているな！？ 」
「ああ！ 」
「行くぞ！ 」
神童先輩の合図でボールが自陣へと戻っていく。そして最後のキッカーである剣城が掛け声と共にボールを蹴り出し、遂にアルティメットサンダーが完成した──かと思われた。
「剣城を入れた甲斐も無かった様だな」
しかし敵陣へと落ちた刹那アルティメットサンダーは急激に勢いを無くし、易易と拾われてしまった。
「もう一度だ……っ、今度は決める！ 」
「剣城そこにいて！ 私が取ってくるから！ 」
「させるか！ お前に好きに動かれては迷惑だ！！ 」
「おわぁー！？ 」
そんな四人で一人をマークとかある！？
「囮役にピッタシだなお前！ 」
「く、倉間先輩！ 」
逆に手薄になったサイドのスペースを縫う様にして倉間先輩がボールを持った選手へと近づいた。中央に逃げた選手を浜野選手が捉える。
「あらよっと！ 」
「しまっ……！ 」
「神童！ 」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
